戦争モノ

『「戦艦大和」の最期、それから 吉田満の戦後史 』千早 耿一郎

『「戦艦大和」の最期』が一次資料なんで、受容史も読みたいなと適当にタイトルで選びました。ごく近い人間によるインサイダーからの伝記にして、同じく帰還兵として当事者である著者の色も濃い。 復員した銀行員による社内の文芸同人誌の話とか、企業文化の…

トルーマン大統領は原爆投下をどのような論理で正当化したか サンドラ・サッチャー教授に聞く

記録でも、被害者の言葉でもなく、違う切り口での原爆についての話。ロジカルで無慈悲にも感じるけど、でも、そのロジカルさの上での正しさを追及する。判断するための情報や条件は適切か、良心のマヒはなかったか… 倫理に独立した価値基準があって、認識の…

広島テレビの碑

この季節に合わせて自社制作ドキュメンタリーを無料公開してる。 1969年版の碑が、めちゃくちゃすごい。2015年版見たことないんで見ようかな。 http://www.htv.jp/hiroshima/index2.html

『戦艦大和ノ最期』吉田満

講談社学芸文庫版。おそらく、その変遷と、受容をちょっとテキストから離れて見ることがいい年こいた立場には必要なんだろなって思うほど、一次資料。純粋に、テキストとしてものすごいテキスト。 個人の極限状態と、大きな状況の転回が重なって、この短い紙…

『流れる星は生きている』藤原てい

実は夫が結構な有名人で、お前かよ!!とお前呼ばわりしてしまうほど、子供3人を連れて引き揚げの極限状態の逃避行をする作者に感情移入していました。この、一番苦しいときに頼れなかった夫とは、その後離婚はしなかったとしても一生ダメだったろうなあと思…

『イマジネーションの戦争 「戦争×文学 コレクション」』

「おれはミサイル」が読みたくて借りた、集英社の戦争アンソロジー20巻のうち1冊。『ゼロ年代SF傑作選』のほうにも入っててどっちでもよかったんだけど、こっちで。芥川龍之介から伊藤計画まで、空想の戦争。 世相ナイズした御伽話の芥川龍之介、戦争を知る…

『空襲葬送曲』海野十三

1932年の連載小説。超おもしろい。http://www.aozora.gr.jp/cards/000160/files/1240_25726.htmlほのぼの江戸っ子ホームドラマからの、空襲の悲惨地獄絵図!毒ガスの恐怖!痛快なミリタリ描写!若人がかどかわされる平和不戦活動はその実は空襲時に電灯をつ…

『五色の虹 満州建国大学卒業生たちの戦後』三浦 英之

満州建国大学の名前全く知りませんでした。何があったのか、何故知られなかったか、生徒の人生という事実そのもので記録。人生を選べる人って恵まれた能力とか立場があるし、その選ぶという行為のために能力を賭けるのが生きる価値のように思うっていう、古…

『イェルサレムのアイヒマン――悪の陳腐さについての報告』ハンナ・アーレント 大久保 和郎訳

決して厚い本ではないんですよ。でも、読むのに4週間もかかった…間に一息入れないと読み進められなかった。あまりの残酷さにためらうとかじゃなくて、一般化やイメージを事実で一歩ずつ排していくので、文章一行で世界が変わるのが1ページの中で何度もあるん…

『ユダヤ人を救った動物園――ヤンとアントニーナの物語』ダイアン・アッカーマン 青木玲訳

この前読んだ『プリズンブッククラブ』の読書会で、みんなすごく面白そうに読んでたので。未来と自由を奪われた状態という境遇への共感で、とても面白い感想でした。動物園をして善良な場所、とか面白そうに読んでると読みたくなってくる。WW2中のポーランド…

『海軍主計大尉小泉信吉』小泉 信三

私家版が、著者死後刊行。著者は経済学者にして慶応大学の学長。一人息子の戦死報を受けたときから、息子が生まれたときにさかのぼり、幼少の思い出、学校、家庭での話、戦地からの手紙…ものすごく淡々とした記録の文体が続いて、差しはさまれるごくごく抑え…

『復讐者たち』マイケル・バー・ゾウハー 広瀬順弘訳

著者はユダヤ人、戦後ナチスの残党狩りをしたナチハンターのノンフィクション。これもまた、判断に難しい本だけど、めっちゃ面白い本でもありました。スパイ小説の大家らしく巧いので、もうまるで面白い本。全然知らない話でした。一つはナチハンター。 ユダ…

『アフガン帰還兵の証言』スヴェトラーナ アレクシエーヴィッチ 三浦 みどり訳

おととしのノーベル文学賞。戦争ポルノ的にちびちび読んでるんだけど、なんかポルノにするには、近すぎて生々しすぎるのとどうしようもなくて全くカタルシスではない、このリアル。不条理としか言いようがなくて。こういうインタビューをソ連で初めてくらい…

『自動車爆弾の歴史』マイク デイヴィス著 金田 智之訳

自動車爆弾の誕生とその伝播と進化を時系列で並べた本なので、知らないグループ名や人名膨大で、最初は背景理解が追いつかない。中東以外に、南米でスペインでイギリスで…なのでそこそこ読み飛ばしていくと、その羅列で現われてくる自動車爆弾の歴史というの…

「この世界の片隅に」を見て

映画館で観とこうかなと思って、ああ日曜日なら行けるかなーでも1800円だし映画の日まで待とうかな、でも終わっちゃうかもなあ、でグズグスためらってやっとチケット取ったら、なんかもうその時点でなんとなく気が重い。 娯楽の戦争モノじゃないの見に行くっ…

『普通の人びと』クリストファー・R. ブラウニング

市民生活の中の戦争状態を記録した本。被害者としてではなく加害者として。WW2でドイツが戦勝していくと前線の軍人とは別に、占領軍が必要になってくるので、そこに予備役の平均年齢39歳という少し高齢の人たちが投入されました。若い現役兵士とは違い、家に…

『戦争は女の顔をしていない』ヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ著 三浦 みどり訳

日常の通勤で読むには重過ぎるので、年に何冊も読めない作者。読むとしばらく他の本読めなくなる。WW2前後のソ連で従軍した女たちが語った事。著者によるインタビューの情景や背景説明の短い挿話と、膨大な語りで構成されている本。 事実がひとつひとつ、不…

『台湾海峡一九四九』龍 應台 訳:天野 健太郎

中国内戦の1949年の台湾の人々を中心に話を聞く著者。エッセイともルポともつかない文体でして、大量の物量は全て著者が聞いた誰かの話か私の話。主観である、と著者は再三書きます。 ちなみに著者は女性。自分のドイツ国籍の息子に乞われて自分の話をするこ…

アニメ「戦争童話集」全部見た

アマゾンのプライム(\3900/年映画観放題とかサービスいろいろ)のアニメカテゴリの中で、「戦争童話集」が見られます。 あんま見る機会の無いアニメですけど、タダで見れるぜ!金払ってるんでタダじゃあないんだけど、まあタダなんで。 「戦争童話」とかこ…

『ヒロシマの歌』今西祐行

こういうストレートに戦争モノのタイトルついてると、引くよな。っていう敬して遠ざける空気にも関わらず、私は単に刺激を求めてこの手のジャンル選んでるだけという露悪的態度をとらざるをえない。 あまりにも、こういった事象をとりまく言説が複雑過ぎて、…

『戦争広告代理店〜情報操作とボスニア紛争』高木徹

超有能がやる仕事。素晴らしいリーダー、効率的な小編成のチームワークに、効果的な戦略とアイデアのすごいビジネスを取材した本。この超辣腕が、国家をクライアントにして、いかに我が国が迫害されて困ってるかという宣伝をして、戦争を有利にするっていう…

『対馬丸』大城 立裕,嘉陽 安男,船越 義彰 絵:長 新太

除籍資料だったのでもらってきて読みました。史実と異なるとこもあるそうだけど、詳細なドキュメンタリー。児童書で小学校高学年くらい向けかな、でも大人が背景知った上で読んでも、結構な情報量の本でした。戦争はピンポイントの事件じゃなくて、連続する…

『動くものはすべて殺せ――アメリカ兵はベトナムで何をしたか』

戦争やばいよやばすぎんよ。読書人生の中でも、1,2を争うキツかった本。2001年に大学院生が別のこと調べてるときに偶然見つけた記録から、とんでもないことがわかったよっていう2013年アメリカ出版の本。 『ショアー』とか読むとナチスのホロコーストヤバす…

『カラシニコフ』1、2

カラシニコフ銃のすべて。 カラシニコフを持った少年兵へのインタビューから始まり、今実際に使われている現場(1は現在内戦してるアフリカ諸国、2で南米(とアメリカ)東欧、イランイラク、アフガニスタン)への取材、存命中の銃の設計者カラシニコフ氏への…

いしぶみ 再び

去年、本を読んでものすごく重かった『いしぶみ』。原爆で生徒が全滅した中学校のドキュメント。その元になったドキュメンタリーが2016/3/31までなんと無料配信中。白黒だ…まさか映像本体見られる機会があるとは思いませんでした。芸術系の賞もらってる番組…

『帰還兵はなぜ自殺するのか』デイヴィッド・フィンケル

映画のアメリカンスナイパーを、原作読んでいるのかと錯覚するほどに、全く同じ内容でした。双方のサブテキストとしてどうぞ。アメリカンスナイパーは一人、こっちは何人かを扱う。 貧困層の若い夫婦、従軍ストレスによる精神崩壊または致命的な肉体の損傷、…

『ボタン穴から見た戦争』

今年のノーベル賞受賞者。品薄で図書館で借りましたが、買って家に置くのがためらわれるほど惨く重い本。著者の意見とかは一切なしで、一つ野テーマについて短いインタビューを何百も収録というスタイルなので、読み易いは読み易いんだけど、それが実体のあ…

『戦争における人殺しの心理学』

グロとか娯楽系の本じゃなくて、兵士として殺人を犯すと何が起きるか、個人と社会への結果をレポートした本。膨大な聞き取りと先行研究からわかったのが、人間を殺す体験は、人類の大多数にとっては人生を崩壊させるほどのものすごいストレスになる、という…

『浮浪児 1945』

全体量はそんなに多くないんだけど一行も漏らさず、ものすごい情報量の本でした。なのに超読み易いし、最近読んだドキュメントの中では一番の良書。 上野駅周辺の浮浪児の、空襲による孤児発生の詳細から、ヤクザやパンパンといったとりまく人々、時期による…

『戦場からスクープ!』

戦場カメラマンの半生記。戦闘の最中の熱狂と、同僚の半数以上が戦場であっけなく死ぬ日々、個々の被写体の深い悲しみも感じる心も当然ありながら、自分自身の死の危機に何度も何度も飛び込む、猛スピードで駆け抜ける人生。麻痺と狂騒のすごい活動量の人生…