『灰色の輝ける贈り物』アリステア・マクラウド 中野 恵津子訳

2002年の本なので今の時代に生きる人が書いた本。名作名作名作と名高い上に、キャプションがすげー好みっぽいのでとっておきました。とっておき。

カナダの寒い寒い島で生きる一族たちの話。たち。南米文学だともっとこう呪いと祝福のダイナミック滅亡!っていうお芝居みたいなかんじあるんだけど、この一族たちは、揺らぎ喘ぎ争いながらも、この世に存在したことがないかのようにみんな消えようとしている。静かに息をひそめているわけでもないけど、埋められたり嵐の中だったり誰にも知られない。スコットランドから海を渡ってきて、島で漁師や鉱夫として生きた一族たち。危険な炭鉱や漁での死、貧困、悲惨は劇的な事件ではなくもっとトーンを抑えて日常として生きる中に包括され、短編集の全てが連作とも、子供、家長、老人それぞれの別の人の話、別の家族の話、別の位相の話とも感じるんだけれど、同じ島を舞台にしていて、全て同じことを書いた話でもあって独特の一冊です。
ものすごく筆のコントロール効いてるんで、教科書的なテクニックの種明かしは追及できるけど、そんなことしたくない浸れる土地の力というか、題材そのものが魅力的に描かれています。人生の肯定というか。

似たような話で飽きるかと思ったんですが、全然飽きない。小さくても、あまりにも語ることは多過ぎる。寡作だそうですが、この小さな島の、短い滅亡した歴史の輝きと残照を描き切ったのではないかなあとも思います。2014年に亡くなられているそうです。