虫を擬人化した絵本は数あれど、極小の箱庭を職人技のように作り上げるタイプの絵本が大好きで、ついつい買ってしまってます。いつまでも見てしまう…。
小さな物と小さな生き物を愛する感性に、妙に科学的な合理性がミックスされてるとたまりません。
最大限人間の風俗のマネをしながら、虫が虫なりの虫生活を営んでいるところをのぞき見るのがいいんだなあ…… 。サイズが明らかに小さいことで、いくら似ていても人間界からは離れるので、この距離感がちょうどよくて好きなんでしょうね。
秋山 あゆ子
『みつばちみつひめ―てんやわんやおてつだいの巻』
時代劇+虫。
すべての小さな物が、虫用の時代劇セットのように構築されてる。着物の柄が、出てくる全ての虫にちゃんと合わせた模様になっててオシャレ。虫の体に着てるので、袖口から出る手は2本!!すごい!好き!
翅の翅脈が適当な棒線じゃなくてツボを押さえたリアルだったり…すき…
ミツバチのはちのす城が、家具も絵本もお盆も何もかも六角形で作られていたり、マルハナバチにトックリバチに、それぞれのハチに合わせたいかにもな商売させてる店構えのデザインとか、すんばらしいです。
絵が本当に素晴らしくて、ハチの巣モチーフの細かい六角形の装飾を、間違い許されない水彩と線できっちりかっちり描かれてて、奥様うっとり。あと、言うまでもなくハチそのものへの愛情がすごい。私もミツバチ大好きなんですが、時代劇なのにだいたいミツバチの生活してる!巣の修繕という大工仕事(しかも道具がみんな六角形)してたり、蜂達の働く絵を見るだけで幸せになってくる。そう、ちゃんと何十匹も描いてあるのだ…!
内容もぎっしりの超密度で、見返しには歌までついてきて嬉しい。6番まであるよ!!♪ハニカムハニカムろっかくけい〜
『みつばちみつひめ―どどんとなつまつりの巻』
働かないで暮らす雄バチの様子も、怠け方が、ギャンブルだったり汚い部屋だったりいや〜んvな本が積まれてたり食道楽だったりキノコマニアだったり… 楽しそうに遊んで暮らしてていいなあ。
で、
これも買ってしまいました。
『くものすおやぶんとりものちょう』
岡っ引きの鬼蜘蛛と、子分ハエトリグモが騒動を追いかける話。懐手からのぞく手はちゃんと6本ある!クモだから!
蟻のお菓子屋さんに、蝉の寺、建築物の絵がすごい。
蟻が住んでる蟻用の家具に蟻用のお布団に蟻用のインテリアに囲まれて、蟻が生活してる!蝉のお寺の本堂の、昆虫の仏像が圧巻。
で、
これはさすがにもう売ってなくて中古で買い求めました。ハードカバーにならないかなあ。
『かがくのとも8月号「ハエトリグモ」』福音館書店 かがくのとも 通巻569号 2016年8月1日発行
物語性も擬人化も一切排したかがくのともフォーマットのハエトリグモ生態絵本。絵が本当に素晴らしいです。写実なのに愛嬌さえ感じてくる。ハエトリグモがいる室内の様子の、さりげない虫モチーフ小物なんかも素敵。ハエトリグモの極小の世界と、擬人化とは違う愛らしさの表現で素敵ですねえ。たまりませんねえ。
キャラ物に安易にハマって申し訳ない気もするけど、みつひめ様もくものすおやぶんも大好きなんで、もっと絵本読みたいです…。
まんがもすごい好きです。装丁が美しく字がメチャクチャ小さいので、できれば文庫じゃない大判コミック判型のほうがおすすめなんですが、もう買えないのかなあ。
『いもむしれっしゃ』にしはら みのり
いもむしが列車になって虫のお客さんたちを乗せて、地下あり、樹上ありのダイナミック路線を1日かけて回って、最後は車庫へ。列車と虫たちの一日を観察しているような目線なので、媚びるようなあざとさとは無縁です。現実の物体を、虫世界の物に見立ててるイマジネーションがわくわくします。団地はコンクリートブロック、トンネルの入り口は植木鉢…
がたーんもにょーん がたーんもにょーんって、読んでるだけでだんだんいい気分になってくる繰り返し。
いもむしを食べようとする蜘蛛が悪者になってたりするのが、ちょっとだけひっかかる気もしたんですが、まちぶせなんてひきょうだぞっていう理由で阻止されるので、なるべく公平な虫目線になってるのかなとか。
絵にものすごくカロリー感じて大好きだったんですが、同じモチーフをこんなに描き直して煮詰めてたんだなあって。
いもむしれっしゃの成長の過程‥真ん中が絶賛増版中の完成本。右側が終了展の出品作、左がピンポイントコンぺ受賞作です。みのりさんの切磋琢磨の過程がよくわかりますね〜。 pic.twitter.com/sOAzDQYNgP
— 絵本アカデミー警固塾 (@yumittoku) 2017年9月2日
やさしい世界、マイルドな画風なので、私の好みとしてはパンチが足りないとも思われそうな…、でも過剰なまでの土への愛、物への愛があって大好き。他の作品は、まだ読んだことないので楽しみにしてます。絵本買うより先にうっかり、作者さんが画業記念に作った手ぬぐいを買ってしまいました。
コケの絵本が読みたいなあ
『つばめこうくう』もとやすけいじ
飛行機!
大好き!
つばめが航空機になって虫を乗せて空を飛ぶ、サイズにあわせて空港の細かすぎる情景が本当に楽しい。アリのグランドスタッフ、乗客のいろんな虫たちの旅模様、虫用の小物の数々と、空き缶や牛乳パックのごみが建物に見立てられたハイブリッド。
やっぱね、おみやげ売り場の虫用Tシャツの腕が4本なのは最高ですね!
「飛行場で荷物を運ぶ仕事をしながら絵本を制作。http://www.kichimu.la/file/motoyasu.htm」
なだけあって、その出発ロビーのフカフカの絨毯ゾーンの空気感わかる、その空港のかんじわかる!!
旅に出るとき急かされるひと時しか滞在しないんだけど、空港のワクワク感が超リアル。
色使いがとても明るくてキレイなので、南国バカンスに飛ぶお話とあわせて明るい雰囲気がすごくいいです。図書館で借りたんだけど、好きすぎて買ってしまいました。
私は全然知らなかったけどMOE絵本屋さん大賞2016に入ってたりとか、4刷累計10000部とか大ヒットじゃん。各生き物の航空会社のエンブレムデザインとか、絵1枚へのカロリーが高過ぎて、すごくいい絵。惜しみなくデザインしてて、色とか量がすごい。
『ぽっぽこうくう』も予約してしまいました… 超楽しみ。まさか絵本の新刊を楽しみに待つ日が来るなんて
こういう系統の絵本で、もしもオススメご存じでしたら教えてくれるとうれしいです。もう大好き。私が大好き!