『覗くモーテル 観察日誌』 ゲイ・タリーズ  白石朗訳

モーテルで30年覗きをしてた男と著者の、始まりからモーテルが取り壊される終わりまでの交流のノンフィクション、という本当にあったことは間違いないのだけれど、話者が語る出来事の騙りと、著者による話者を題材にしたノンフィクションという外側から包む視点、そして書籍として成立させるための構成とで、真実とかそのへんは読者に委ねられているので、誰かの夢の話に出てくる人の人となりを聞くような二重の夢のような距離感がある。話題がセックスと覗きっていう犯罪なこともあってまず飽きないのと、30年間のアメリカ史(ベトナム戦争で下半身不随になった夫とのセックス、異人種のカップルのセックス…)を抽出されたエロいエピソードで読ませてくれるので読書後の情報量と情緒の満足度がすごい。