『カルチェ・ラタン』佐藤賢一

大学の話。神学の話。『王妃の離婚』も、大学在籍してた人ならきゅーんときちまうような郷愁と批判と若さと切っても切れない空気を持ってました。これを奨めてくるなんて、意地悪だよS君。
学問とか大学とか頭でっかちな理屈と、男女関係を対比して、「神と人」とか「言葉と肉欲」とかそういう問題をえぐってくわけなんですが、そこに若さが加わると、若いとどっちもわりと最高潮なもんだからすごいエネルギーの本ですよ。クラスわけするなら、「薔薇の名前」級。

勉強してると、男性である女性であるっていうことを意識的に無視しがちですが、こういうの読むとやっぱそれも不自然なんだなぁとか思います。コンプレックスであるだけじゃなくて、無視して問題放っておくと、脳みそまでゆがんできそうだしなぁ。

パワーは『王妃の離婚』のほうがあったと思うんだけど、連作探偵モノみたいな冒頭から、こんだけ長い小説が全部しっくりハマってるっていうのは手堅い。


大学居る間に、佐藤賢一の小説を読んだら、反感とか拒否感とかあったかもしれない。でも、今は新鮮であり、面白かったので、拒まないだけの年はとったのかなぁと思います。