2009-01-01から1年間の記事一覧

『旅する巨人 宮本常一と渋沢敬一』佐野慎一

民俗学の宮本じゃ売れないから、渋沢くっつけたのかなーと邪推してたら、んなこたーなかった。すいませんでした。表裏一体の人でした。コンビ的な人間関係ではないけど、いろんな意味でお互いになくてはならない存在。渋沢は金はあるけど、人生がない。宮本…

『輝く断片』シオドア・スタージョン

SFオチじゃなくてびっくりした短編集。むしろSFオチだったらフライングブックスの衝動に駆られざるをえないくらい、不思議な読後感です。奇想コレクション という叢書の一冊にふさわしく、狂気でもなく特異でもなく、普通に変な本。変なのに、美しいとか切な…

『レナードの朝』

中学生の頃持ってたんだけど、読まずに売って、今借りてきて読みました。月並みな言葉になるけれど、肯定も否定もせず受け入れる、時間をともにすごす、それでわりと人生満足なんじゃないかな。できないから困るんですが。突然、嗜眠性脳炎という奇病で人生…

『遠い山びこ』―無着成恭と教え子たちの四十年 佐野 眞一

教育やった人なら誰でも知ってる『山びこ学校』のその後。そんな予感はしてましたが、つらいときに読みがちな、女工哀史とかお悲しい労働カテゴリに入れたくなる本でした。山びこ学校とはなんだったのか、当時とその後の追跡ルポ。「理想」ってのが教育内で…

『生物と無生物の間』

こういう本って、書いてあることそのものに興味があるよりも、著者を楽しむもんだよなーと思います。皮肉でラディカルで気取ってて理系だわ!と理系っぽさが存分に楽しめました。生命のモデル論をいろいろ紹介してくれたんで面白かったです。でも、もう今は…

『ハローサマー、グッドバイ 』マイクル・コーニイ

イギリスジュブナイルかと思いきやー、SF。ものすごーくSFしてました。ハードでもあり、ソフトでもあり、SFとしかいいようがない。

『犬の年』ギュンタ−・グラス

この前読んだ『ベルカ吠えないのか』に似てるかと思って借りたら、全然違いました。たッ! 戦争を挟んだドイツを、犬の系譜でつづる年代記とかどっかで紹介読んだような気がしたんですが、たしかにそうだけど、むしろ犬が止まってて、アニメで行ったら背景が…

『サンクチュアリ』フォークナー

フォークナー大好きなんで、読みました。この、最初っから破滅くささをぱんぱんにはらんだ不穏で不機嫌な空気と、影を濃く伸ばす強烈な日差しのイメージがたまらんです。話は、南部VS個人みたいな、いつもどおりのフォークナーなんですが、初期の作品らしく…

『アイルランド短編選』 橋本 槇矩訳

ケルト民話じゃないよ、暗い、ビンボー、暗い、不幸、破滅!あー悪くなるんだろうな、なるんだろうなという予感ビシバシで破滅! 映画のアンジェラの灰みたいな、あの灰色のしめっぽいビンボーくささが、全編にわたってしんみりしてます。で、アイルランドと…

『星を継ぐもの』

古典SF。ミステリ。謎解きがSFギミック満載で最後の結論が爽快でした。謎解き過程に、ステレオタイプな葛藤とか人物の衝突とかありつつ大団円でチーム感あふれてていい本でした。

『聖杯と剣―われらの歴史、われらの未来』 リーアン アイスラー著

ファンタジーじゃないよ、フェミ本だよ。 私はなんだってフェミ本ばっかり読んでいるのだろうか・・・ 原体験は、大学の授業で男らしさと女らしさを発表した野郎がいて、無意識のうちに「男らしい女」○「女らしい男」× っていう発表をしちまってたんだけど、…

『PRESS START -Symphony of Games- 2009』

今年も運良くチケットとれたので行ってきました。 いい音楽聴けました。いい音がよく鳴ってたので、今までで一番音楽として楽しめました。 成功要因は、昼夜2回公演の、夜なんで練習+1回分くらいうまくなってたのかも。 聞いた話ですが、こういったコンサー…

『幸せの理由』イーガン

人間についての本。SFはあくまでもギミックに過ぎなくて、その中でゆれる人間を描く短編集。SF類型だった登場人物が、人間観察されていくうちに予想もしないオチとともに一人の人間として転がしてくので読み応えありました。

『色と欲』上野千鶴子

初★上野千鶴子。だが、これは紀要っぺぇアンソロなので、上野千鶴子は最初の1本だけです。しかも10年前の世相を切るシリーズ本の一冊。バブルがはじける頃までの、日本社会の欲望のあり方を、家電製品とかAVとかいろいろな切り口から考察。「欲しい」ってい…

『たったひとつの冴えたやりかた』ディプトリー 浅倉久志

訳が超うめぇ 一人称と三人称を自在に自然に、しかも瑞々しい統一されたトーンのままに。

『漂着物事典』石井忠

著者は高校の先生。変わり者っぽい高校の先生感がすごく味わえました。しかし、なんでこんな本読み出したのか自分でもなぞ。事典と銘打ってますが、漂着物についての短いエッセイと考証と事実が淡々。すっごくいろいろなモノが流れ着きます。地平の果てから…

『乱鴉の饗宴』下 ジョージRマーティン

と思ったら下も読んでしまいました。ああ気になるさ!先は気になるさ! でも、原作自体が迷走しそうな気配ぷんぷんに加えて、訳は五百歩譲ってもハラタツあとがきなので、微妙な気分です。先は気になるけど、読む楽しみは失いました。先だけ気になります。

『マグダレンの祈り』ジューン ゴールディング

修道院の未婚の母出産施設の話。だが、感動ドキュンとか、愛の物語とかじゃないよ! 時は20世紀のアイルランド、妊娠に対する社会的な制裁を受けて、劣悪な環境で出産し、子どもを取り上げられる女たちの世話をする、助産婦が過去を振り返ったドキュメンタリ…

『剣嵐の大地』ジョージRRマーティン

相変わらず表紙絵がもったいないシリーズ。1冊目も相当でしたがこの絵描き全然う・・・と思ったら、斑鳩(STG)の絵の人でした。鈴木康士。ぐぎぐぎぎぎそりゃ納得すぎて、もっとグラフィカルに描かせてあげたら雰囲気出るのにと思いました。好きだけど…

『乱鴉の饗宴』上 ジョージRマーティン

ファーーーーーーーーーー(ゴルフで危ないときの掛け声)氷と炎の歌・乱鴉の饗宴改訂問題wiki岩波版の西遊記で、途中で訳者が変わってのたうちまわってる人の気持ちがすごくわかりました。 なんとなく推測できますが、訳者の力で、3部までが格調高い擬似歴…

『バカバカRPGをかたる』友野 詳

だーかーらー TRPGってきらいなんだよwと思う自己満足極まりない語り口で超ムカツクwけどTRPGそのものが目指すものは大好きです。世界観の構築とか、動かし方とか。でもかかわる人がどうしても普通の種類の作品制作以上に神視点で作品を作る権力を持つため…

『エロス』広瀬正

厳密には多分SFではないですが、ifの人生がこの現代と地続きみたいな日本の有様で、小説の中での本当の人生が、架空の世界の人生・・・そんな構成なんて些細なことで、すごくよく完成してる小説。

『天涯の砦』小川一水

いつもの小川一水。SFステレオタイプな職種と、ありがちな人々で、SFって様式美だよねとか思いました。

『ヤマガラの芸―文化史と行動学の視点から』小山 幸子

書いてあることは興味深いことこの上ないけど、地獄のように読むのがつらい日本語がへったくそな本。超添削したい。中身は、ヤマガラにおみくじひきをさせる歴史を、世界では占いありきだったのが、日本では芸から発達した〜とか読まなきゃ絶対知らない知識…

『田宮模型の仕事』田宮俊作

静岡県民必読の書。というわけでもないですが、超好きなものがある人っていいよなぁーと思いました。

『リボンときつねとゴムまりと』村山壽子 村山知義

頂き物。その節はありがとうございました。感想をお伝えせずにいましてすみませんでした。で、 「三匹の小熊さん」展に行ってきました。渋谷駅からちょっと歩くとあんな高級住宅街になるなんて知らなんだ。 http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2009/05/…

『現代民話考 6 銃後・思想弾圧・空襲・沖縄戦』松谷 みよ子

むかーし、友達が面白いと(以下略) とりあえず、ネタがとっつきやすそうなところから読んでみましたが、語り手と話の関係が近すぎてぞくぞくするような不思議な読後感。語られていることは、私にとっては信じられないほど昔だけど、その人にとっては経験し…

『夜の姉妹団―とびきりの現代英米小説14篇』柴田 元幸訳

いかにも現代小説な。

『麻雀放浪記』阿佐田哲也

エネルギッシュで奇跡のような時代の終焉が、戦後の終了と、一人の男の人生オーバーラップで、さびしい小説です。なげやりラスト(いい意味で)っぷりで、なんかやっと終わって安心しました。しかし麻雀小説だけど、勝ってる試合よりも負け試合の描写が多い。

『マイナス・ゼロ』広瀬正

あとがきに、昔お世話になったお爺さん(70歳)が出てきて不意打ちすぎてアイスコーヒー吹きました。そんなことはさておき、昭和の40年代のSFエンタメにして、主な舞台は戦前の東京。それを21世紀に読むってんだから、格調高すぎてすげー面白かったです。謎…