2017-01-01から1年間の記事一覧

『ハイ・ライズ』J・G・バラード, 村上 博基訳

最近映画になってたみたい… タワーマンション内で階級闘争(物理)からの人間性むきだし狂気の混沌群像劇なので、映画としては絶対面白くないわけはない。見たいなあ。 バラードは、WW2上海租界で日本軍の捕虜になってからの支配階級からアジア人に見下げさ…

『サンタクロースっているんでしょうか?』 フランシス・チャーチ 中村 妙子訳

アメリカの8歳の女の子の質問に、ニューヨーク・サン新聞の記者が応えた社説を絵本にしたもの。 アメリカの善いところの全部だなあ… アメリカが創造したプレゼントをたっぷりと持った物量によって幸福をもたらす神、でっぷり太った赤い服のサンタクロースが…

サンタクロース延命計画

これを新聞風かなんかにレイアウトしてORADANO明朝フォントで印刷して、メディバンで加工してボロボロにして隠しておいて古びさせたところで、サンタの存在を疑い出したところでおもむろに古文書としてとりだす。 親は計画的。 サンタクロウス 師走の巷間を…

『家族 日本の名随筆 (別巻42)』 久世 光彦

中勘助の蜜蜂が読みたくて借りたんだけど、テーマ家族でしょっぱなから「桜桃」なあたりもうね… ちょっと昔の人が気になったりしてその著作検索すると結構な頻度で出てくるシリーズなんだけど、こんな何百冊も出てたとは知りませんでした。これすごくいい本…

『もし、シェイクスピアがスター・ウォーズを書いたら まこと新たなる希望なり』イアン・ドースチャー  河合 祥一郎訳

スターウォーズだ… どこをどう見てもSW… そしてどう見てもシェイクスピア… 台本形式だし、挿絵も舞台をそれっぽい版画風で描いてて大真面目。爆笑の後に困惑する程度に出来がよいです。よくできてるなあ。面白かった。ときどき、宇宙を股にかける系のものす…

『完本 カリスマ―中内功とダイエーの「戦後」』佐野 眞一

子供の時にはあった、スーパー ダイエーがどうやってできたかと、その終わり。すでにある巨大な常識みたいなシステムが、ほんの短時間で出来上がって、それがどれだけの変節を経たのか、興味深かったです。時間。 文化人類学や社会学の範疇では、と作中イン…

『女子プロレスラー小畑千代――闘う女の戦後史』秋山 訓子

昭和戦後史で、男の格闘技の本はどこか社会の裏面のドロドロとした暗さがあるのに、これはスカっと明るく爽やか大冒険でものすごく面白かったです。いい本だったなあ。最近読んでた昭和モノがいろいろ重なってまさに戦後史の読み応え。著者がピュアなまでに…

『深沢七郎コレクション 流』 (ちくま文庫) 深沢七郎

楢山節考は入ってないけど、代表作の小説。 「東北の神武たち」は、今村昌平監督映画に1エピソードとして入ってたやつだあ〜これがあんな映像になってたのかと。 ものすごい作品で、なんつうか日本の話なのに現代社会から隔絶した地の自然描写とエキゾチズム…

おれにはアメリカの歌声が聴こえる―草の葉(抄) (光文社古典新訳文庫) ホイットマン 飯野 友幸

薄い入門版の抄訳で光文社古典新訳文庫ありがとーう! 岩波文庫だと分厚いの3冊なんで、あの岩波のギチッとした小さい字の版組で分厚いの3冊だと今読む元気なくてさ。しかし、やたらめったらスーパー元気がでまくるすごい本だ。 詩+その解説で、最後に原文…

[本]『春にして君を離れ』アガサ・クリスティー 中村 妙子訳

選んで読んだわけじゃなくて、図書館の払い下げにあって、しかも今手元に読む本が全然ないので読んだら、なんかジャストタイミンな話… イギリスの老婦人が、旅行で足止めされたときに余りにも何にもやることがなくて、ついつい人生の回想をする話。何も問題…

[本]『すべての美しい馬』コーマック マッカーシー 黒原 敏行訳

文体が特徴的で、50年代アメリカというほぼ現代でカウボーイしてその100年前みたいなウェスタン冒険するにはっていう、すでに現実離れしてることを、会話のカギカッコ無し、時々句点がなくなる語りみたいな文体が何重にも現実から隔離してくれて、ものすごい…

『アラバマ物語』ハーパー・リー, 菊池 重三郎

一番言いたいことは、すごく読み易かった面白い本だということです。名作名作と聞くんで、岩波文庫かなと思ってたんですが、予想外に暮しの手帖社刊。つまり、大衆向けのとても読み易い小説で、小難しいところは無い面白い60年代ベストセラー。時代感じるこ…

『別冊映画秘宝ブレードランナー究極読本&近未来SF映画の世界』

迷ってたんだけど買っちゃった… ISBNついてる商業誌なのに同人誌。こういう作者の労力を無視して、紙代にもなってなさそうな本は本当に金払う価値がある。ブレードランナーしか載ってないというか好きな人の執念と妄想しか載ってない。 映画本編のバリエーシ…

ブレードランナー2049

感想メモ。 ネタバレなしすごい。本当にブレードランナーだ。ブレードランナー+α。一本全部ブレードランナーが丸ごと入ってるのにもう一本!みたいな。 ちゃんとこの現代における新作してるのに、まるでブレードランナーで、なのにブレードランナーの続編と…

『死ぬことと生きることと』土門拳

タイトルが大仰でビッグネーム。 近年の再販版で、あとがきの人が微妙に無名で???だったけど、現代でこれ読むということについての話だったんで、たぶん出版当時と全然違う受容してました。昭和の文化人おじさんが文化人らしい本を出した、自身のスランプ…

ジプシー・デンジャーを2017年に買う

ある晩、突然パシフィック・リムの主人公機ジプシー・デンジャーが欲しくなってしまい、日本の大きなお友達価格のお品とアメトイ商品展開の物量の荒波に一晩揉まれて煩悶してたので、備忘として残しておきます。そろそろ2の情報が出てきて、公開されてる機体…

『「伝える」ことと「伝わる」こと―中井久夫コレクション』中井久夫

人間についての本質。人間の根源。 すごい面白かった本なので、手元に置こうかなあ。精神科の医者、各国語を操る文学者として、現実の肉体と精神や空想の領域を自由に横断する視点ならではの、人間を構成する断片についてたくさんの事実と、そこから考察した…

『重い障害を生きるということ』 高谷 清

とても読み易い2011年の新書。 山のように本がある中で、クズ本も書き飛ばした本も仕事で作る本もあるじゃん。ジャンル関係なく題材がスゴイとか文章スゴイとかいろいろあるけど、ものすごい本だった。 障害の当事者ではなく、小児医療に戦後間もなくから携…

『社会にとって趣味とは何か 文化社会学の方法規準』北田 暁大, 解体研

社会学とは何か、が本筋で、社会学についての歴史的経緯に紙数多く割いてるんで1年生の教科書かと。その方法使って、オタクの受容史というか社会における位置解説してくという流れ。 オタクという用語が使われた媒体に当たって歴史的に拾ってくところとか豆…

細かい絵の虫擬人化絵本

虫を擬人化した絵本は数あれど、極小の箱庭を職人技のように作り上げるタイプの絵本が大好きで、ついつい買ってしまってます。いつまでも見てしまう…。 小さな物と小さな生き物を愛する感性に、妙に科学的な合理性がミックスされてるとたまりません。 最大限…

怖い絵展 東京

最近調子悪くて鬱なので、午前休とって精神科行った後、時間あったからと、怖い絵展に行ったら心身にマジで堪えました。 ムンクとかモローとかあのへんの不安を共有しまくってしまってヤバかったです。ちょっと行くんじゃなかったかもってくらい、瞬間的に死…

デスレース 2017年版

何の因果かデスレースと名のつく映画を、見かけるたびについ全部見てるんですが、amazonプライムでまさか2017年の今年になって1本見かけてしまいました。というか関連商品に表示される。なぜ好きだとバレたのか。 どのデスレースもだいたい殺人レースを描い…

ダーク・シティ

暗く、美しい寓話のようなSF映画。1998年かあ… なんでか観たことなかったけど絶対好きだから見とけばよかったなあ。今見ても面白いんだけど、若い時に衝撃を受けて偏愛したかったなあ。記憶を奪われた登場人物たちのノワールであり、闇に沈む都市の絵のよう…

『時代遅れの人間』ギュンター・アンダース 青木 隆嘉

前書きが超陰鬱。人類が滅びた後に、廃墟で拾う本みたいなこと書いてある。 人間の尊厳の観念を植え付けてくれた父の思い出に、 人間の後輩にかんする以下の痛ましい頁を捧げる。 iii この最終弁論を描いたのは、より人間的な世界が存続するためであり、もっ…

ファンタスティックビースト

かわいい動物が見たい… という動機だけで見た映画。 宣伝でかわいくうつってたカモノハシみたいなやつの生態があんまりかわいくない!まじか!とは思いつつ、だいたいかわいい物しか画面にうつってなくてよかったです。動物園だよお…絵が綺麗で話も安心安全…

『喋る馬』バーナード・マラマッド 柴田元幸訳

柴田先生チョイスの短編集。一番有名な「魔法の樽」は外したんだと。ちぇっWW2間もないニューヨークのユダヤ人に、良心の呵責という形をとって訪れる現実が、神話や寓話に転換する。抒情と信仰を仲立ちとして成立する。瞬間ではなくて、そこからきっと永遠に…

『生命・人間・経済学 科学者の疑義』宇沢 弘文, 渡邊 格

今から40年前の経済学者と分子生物学者の対談。まるで昨日書かれたかのように、何にも解決してない!様々な問題を挙げて、じゃあこれは現行制度の社会システムや理論のほうに問題があるよねっていうスタンスの対談。 同じ社会が続いてるんだからそりゃ問題も…

犬張子がかあああわいい

犬張子はかわいい。 用途が子どものお祝いというめでたいめでたい祝祭感、犬っていうキャラクター物ですでにかわいい、抽象性高いデザインがいいし、白ベースに黒や赤で締まった無機質さと、そこに手作りのゆがみや手彩色の暖かさがあるギャップ。 犬張子と…

父親の話2 家

自分が給料もらう身になってしみじみ身に染みるが、父親は高給取りだった。 1匹10万円のノーザンバラムンディや、1匹17500円のインペリアルゼブラプレコを群れで買い、熱帯魚のための水道電気代は月4万円×数十年、健康にいい放射能の出る石(天然ラジウムか…

父親の話1 自動車

私の思い出兼ねて、父親の生涯についての話になりそうだ。 私は車にとにかく酔いやすい。車に乗るたびほぼ吐いた。その場を片付けたのは助手席の母親だが、免許もなく機械に弱く車のカギは持たない母親なので、後で消臭なり清掃なり、愛着のある車のメンテナ…