『ハイ・ライズ』J・G・バラード, 村上 博基訳

最近映画になってたみたい… タワーマンション内で階級闘争(物理)からの人間性むきだし狂気の混沌群像劇なので、映画としては絶対面白くないわけはない。見たいなあ。
バラードは、WW2上海租界で日本軍の捕虜になってからの支配階級からアジア人に見下げされる価値観転倒と、子ども身分の庇護剥奪→米軍による解放イギリス帰国で戦時欠乏から物量の倒錯→→…が実話なので、技術も心も確固たるものでなく人間社会とは脆弱過ぎるものだという軽蔑隠さないし、混沌と暴力が本体であるという絶望のような肯定へとあっという間に堕ちる過程がそれはもう。

オシャレ清潔モダン機能美なマンション内で、高層階住民が飼う犬を下層階住民は目の敵に、下層民の子供は高層階屋上やプールから締め出され、間に住む中間層は狂乱の予兆を感じながらも、どちらにもつかずにマンション以外の世界が存在しないかのように振る舞い住み続ける… そしてマンションは故障と汚濁の支配する原始世界へ… タワマン住めなくなるわ。ちょっと不思議な終わり方をする。成人男性の文化を全否定。
未来なのか発表当時年代なのか、よくわからなくなる抽象性とそれに伴う妙な静けさ。こんなに暴力的なのに熱くない。下世話な乱痴気騒ぎエピソードで、面白さっていうなら面白いわけで人間みんなこういうのが面白いだろう???っていわれてる気分で絶望感じる。面白いよ。