『心: 個人完訳 小泉八雲コレクション』小泉 八雲, 平川 祐弘

新年最初はいい本が読みたい・・・。
とてもセンチメンタルな童話のような読み物と、ハーンの東洋文化論が一冊に『心』と題されて刊行されたもの。岩波文庫で読んだことあるんだけど、娯楽に近いような領域で読み返したい気持ちある。あの感情の揺れ動きをもう一度。
読みたかったのは「阿弥陀寺比丘尼」。夫と子供を亡くした母親が、尼になり、小さな物に囲まれて庵に子供たちを招いてあそび、その子供の子供の子供の代まで生きたと、終わり方も素晴らしい読み物で、この世の切ない喜びの一瞬から、小さく抽象的にシュリンクしていって長く長く永遠にも思えるような幽世を描いて、手際鮮やか、読物として超面白い…欧米短編小説として体裁カッチリ、そこからはみ出すエキゾチズム。

この人の母子ものは、自身の体験が投影されていて依るところの絶対だし、且つ読み物として効果的に描くというスタンスで読者をガンガン操作してくるんで、超強力。よかったなあ…

半分くらいの文量が注釈と後書きと、心が献呈された雨森氏についての研究になっててそちらも興味深かったです。語学力について明治の世代には、並の大学教授なんぞかなわないとか。