2015-01-01から1年間の記事一覧

『百年法』

あんまり頭が良くない系のエンタメ小説なんだけど、長寿社会の果ての実験小説的な趣には大変興味があるところなので、最後まで読みました。ww2後に不老不死技術でドーンと労働者を増やして経済発展して数十年の日本、人間が死なないから行き詰った社会で導入…

4DX パシフィック・リム。4DXと『素晴らしき新世界』

4DX映画館ができたよワーイ 上映一作目観てきました。パシフィックリム自体は何度も観ていますが、4DXのテストランかと思うほど、フル機能を堪能できる作品でした。 映画に合わせて… 吹き抜ける風が、さわやかで気持ちいい。 結構激しいライド座席に、水霧プ…

『やちまた』足立巻一

日本語文法の先駆者、本居春庭の評伝。且つ、著者の自伝。日本語文法が苦手だった身なので、偶然知りました。 リサイクル本でたまたま手にとった灰谷健次郎の『われらいのちの旅人たり』に、この本の著者の足立巻一の逝去に関して一文があり、とてもよかった…

『不滅の物語』イサク・ディーネセン

ヨーロッパの近代小説。短編集の体裁で、起きる事件もドラマチックに書かれてるんでサクサク読めはするんですが、普段読んでる小説とあまりにもかけ離れて異質でした。物語を描いた物語という、入れ子構造を理解している登場人物というメタ的な視点もあるの…

『黄金の眼に映るもの』 カースン・マッカラーズ

アメリカの小説。ノヴェラくらいの分量ゆえに濃厚。 軍の基地で殺人事件が起きた、という導入から始まるので、この中の誰かが殺されるという予感を抱きながら読み進む構造だけどミステリではない。 普段読むかんじとはちょっと違ってたんで感想のとっかかり…

『皆勤の徒』

ものすごい小説でした。これ以前/以降になるような作品なのに、これを作れるのはこの作者だけだろうっていう。日本語を意味何重にも酷使してるので、こういうのが芥川賞もらえばいいんじゃないかと思うほど。直木賞はもらえそうにない系の作風通すので読むの…

『ボタン穴から見た戦争』

今年のノーベル賞受賞者。品薄で図書館で借りましたが、買って家に置くのがためらわれるほど惨く重い本。著者の意見とかは一切なしで、一つ野テーマについて短いインタビューを何百も収録というスタイルなので、読み易いは読み易いんだけど、それが実体のあ…

『聖の青春』『将棋の子』

昭和57年前後、将棋棋士を目指す羽生世代と言われた若者を描いたネガポジにあたる2冊。『聖の青春』は羽生に匹敵する天才棋士ながら夭折した村山聖、『将棋の子』は棋士になれずに去って行った若者たち…そして著者は彼らと同世代で将棋を愛しながら奨励会に…

ハーモニー

ネタバレなしだけど、初見で見るのが楽しいと思う人は見てからどうぞ。 小説ウロ覚えで見に行きました。伊藤計劃の長編中ではこれが一番好き。 百合も大好きだが、監督がそれ以上に好きなので、「たまに絵がなかむらたかしっぽい顔に見えるな…」という変な感…

子どもに作る食事で、汁にお麩やカツオブシを入れていると、私が子どものときに飼育していた金魚とかオタマジャクシに麩をあげてた時のような気分が思い出される。 昔の図鑑には、エサとして麩やカツオブシをあげるって書いてあったけど、今は専用エサをあげ…

『MとΣ』

中編集。就寝中の日本人が無差別虐殺される「パレード」を通勤中に読んでる時に、電車が停電して止まったもんでゾクっとしたね。あなたが私ではない不安、暴力への不安を、一見無関係な時と場所と事件の過剰なカットバックであぶりだす技法なので、私は読む…

チャッピー

泣いた泣いたものすごく泣いた。ロボットがいじめられる。かわいそうで、もうこれだけでダメだ。そのあと、お母さんに慰められる。もうだめだ。涙が止まらない。 ごく近い未来、南アフリカに配備された警察ロボットが意識を持った途端、いろいろあってギャン…

ブックオブライフ

メキシコの死者の祭をモチーフに、ドクロとお花と原色で過密で派手派手な装飾と、人形劇のような舞台を3Dならではの美しい光の演出して、ビジュアルがすごかった。予告編で買うのを決意したほどものすごい。アニメーションも素晴らしいです。ブタさんが動く…

『戦争における人殺しの心理学』

グロとか娯楽系の本じゃなくて、兵士として殺人を犯すと何が起きるか、個人と社会への結果をレポートした本。膨大な聞き取りと先行研究からわかったのが、人間を殺す体験は、人類の大多数にとっては人生を崩壊させるほどのものすごいストレスになる、という…

『100歳の美しい脳』

修道女の老後を何百人も調べて、アルツハイマーの原因を探ったというプロジェクトについての本。エセ科学とか啓発本系っぽいタイトルですけど、ヒューマンなドキュメンタリーですごく面白かった。尼さんってみんな同じ年に修道院に入ってから、出産しないし…

『82歳の日記』メイ・サートン

日記を何冊も出版してて、詩人として現役の女性の最後の日記。だから、読まれることを前提とした文章でもあるんだけど、結末を目指さずにこの今日一日を書き続ける日記という形式なんで気軽に読めました。気軽なんだけど、なんか得るものが大きいって、半分…

『GHQと戦った女 沢田美喜』青木 冨貴子

混血のWW2戦争孤児のためのエリザベスサンダースホームがメイン話題の本ではなく、その創始者の沢田美喜の評伝。 なので、その生まれである財閥の歴史から、華やかな生活、語学と話術のものすごい事務能力と、財閥の御財布の派手な浪費と、外交とアメリカの…

『センスオブワンダー』レイチェル・カーソン

短い本。幼い甥と、自然の中を散策した時のことが書かれていて、文章が美しい。原書は写真と一体の大判本だそうで、この新潮社の新版には日本人写真家の写真が添えられた小版。 私単純だから、これ読んだ後、木立がすごくきれいに見えました。

『中国狂瀾の歓楽街』

中国の個人の価値観の変化を、近年の主に性産業の事件から紹介。字もでかいし軽めでエキゾチックとエロいのとでつい読んでしまったわりに、結構考えさせられました。 美貌以外何もない十代の女性が高官の愛人になって、故郷の一族を潤すほどの金(主に組織の…

『神、人を食う』

この前読んだ介護民俗学の人。調査力が優秀過ぎて読んですごく面白かったので、今は介護の仕事やってると思うと、どうしても惜しく思ってしまう。1970年生まれだから、一番気力体力ある時期じゃん。そっちも面白かったけど、こういう深く掘り下げる調査やっ…

『私は二歳』松田道雄

一人称2歳児の皮をかぶった小児科医であることを隠そうともしない、昭和の軽小説で面白いですよおおおお。 いしいしんじの一人称幼児とか、違和感ばっかり感じてましたが、この「一人称二歳児の皮をかぶった小児科医」という皮膜があることで、こうも面白く…

『世界屠畜紀行』

動物を食肉にする場を、中東、モンゴル、韓国、東欧、アメリカいろんなところで取材。イラスト付き。村祭りだったり、大量消費の肉作る工場だったり、肉にする動物にもよるし、肉にする技術とそれに関わる人々と場がそれぞれ全然違うけど、みんな肉がうまく…

『エンジェル・フライト』

異国で旅客死した人の遺体搬送に携わる業者のルポ。業者、遺族、それから著者と、業務ルポから遺族について考察していくので、面白い本でした。著者がエモーショナルだと、ルポの目線が読者と乖離したりすることあって知りたい事実に手が届かないストレスあ…

『驚きの介護民俗学』

ケアを開くという介護の本のシリーズで、著者は民俗学の若手学者だった人。今は介護職についているそうで、介護の現場で利用者と関わりを民俗学的な視点で見た連載をまとめた本。どうしても望まぬ転職だったのではと思ってしまうのだけど、連載を持ちながら…

『浮浪児 1945』

全体量はそんなに多くないんだけど一行も漏らさず、ものすごい情報量の本でした。なのに超読み易いし、最近読んだドキュメントの中では一番の良書。 上野駅周辺の浮浪児の、空襲による孤児発生の詳細から、ヤクザやパンパンといったとりまく人々、時期による…

『戦場からスクープ!』

戦場カメラマンの半生記。戦闘の最中の熱狂と、同僚の半数以上が戦場であっけなく死ぬ日々、個々の被写体の深い悲しみも感じる心も当然ありながら、自分自身の死の危機に何度も何度も飛び込む、猛スピードで駆け抜ける人生。麻痺と狂騒のすごい活動量の人生…

ザ・ロング・アンド・ワインディング・労働

theatre project BRIDGE二日目を観劇しました。「ワインディング」と聞けば雷電(STG)の紫色の曲がるレーザーを連想し、タイトルがビートルズの捩りであることさえ気が付かなかった人なんで、所謂ノルマチケットで知人がいるわけですが、感想書くことにしま…

仮面ライダー クウガ

amazonプライムでタダなので、放映当時以来、クウガを見始めました。オダギリジョーが若いやつ。怖い。ホラー路線なので怖がらせる演出が容赦なく投入されて、当時はこれ朝に見てたからいいものを、夕方見るんじゃなかった。 怪人の目的が殺人なので、一般人…

抑圧

私が一番恐れていることは、躁鬱病と診断されることだ。 躁鬱病は女に遺伝しない、と医者に言われたけれど、自分の気分に波があることはわかっていて、波が大きいときほど喜びが大きく、エネルギーがあって、そういうときは創作したいなという気分になる。た…

パシフィックリムがどれだけ好きか

パシフィックリム2の製作が滞っているらしくて悲しいので、パシフィックリムについて書きます。 2は双頭か双面の怪獣が出るね!絶対! でも、私はロボットが好きで好きで、最初の10分のロボ起動シーンで滂沱の涙を流し、EDでも涙がこぼれるほど好きなのでロ…