『戦争における人殺しの心理学』

グロとか娯楽系の本じゃなくて、兵士として殺人を犯すと何が起きるか、個人と社会への結果をレポートした本。

膨大な聞き取りと先行研究からわかったのが、人間を殺す体験は、人類の大多数にとっては人生を崩壊させるほどのものすごいストレスになる、ということ。
そのためにWW2くらいまで発砲率は15〜20%くらいでしかなく、これは殺人のストレスを避けるために、空砲撃ったり、無意識に敵を殺さないように誤魔化してたんですね。それがわかった後に、発砲率を向上するための条件付けの訓練を行った兵士によるベトナム戦争では、発砲率は驚異的に向上したものの、心理の防衛機構を超えた行為によるストレスで兵士の精神病率が跳ね上がる。殺人を行った後の98%の兵士が精神を病み、残りの2%は殺人を犯してもストレスにならない生来の体質の人間であると。
「殺人はどうしていけないのか」という質問については、これが経験則による解答になってると思います。

あと、究極にやりたくないことをやらせる制度についての資料でもあるので、ブラック企業に勤めてる人必見。まじで。
何が人間の心を壊すのか、そして壊すほどの行為をさせるもの何なのか、実例を持ってよくわかります。
ストレスを与える要素について、当たり前に、疲労や睡眠不足や、栄養の欠乏も主要な要因として挙げられてるけど、仕事だと我慢しちゃうだろう!でもそれって、当然精神とか健康損なうからね!あったりまえだけど!
あと、人間が最も嫌なのは憎悪を直接向けられることで、救護とか人を励ましす生にポジティブな業務ではストレスが少ないとか、あったりまえだけど!!
それまでの部隊単位の運用から、個人が期間限定で派兵されるようになったベトナム戦争で、仲間が次々に入れ替わるから継続した体験分かち合えずストレスで病む若年兵とか、まんま派遣社員の悲哀ですよ!
あと、ベトナム戦争中の精神病の兵士に、抗精神薬ガンガン使って復帰させたから有病率が史上かつてないほど下がって、正解かと思われたけど、対症療法で症状抑えただけだからその後の経過がより悲惨とか、半端に精神科行って仕事続けないほうがいいもんなのかもしれないなーとか思ってました。

このへん、実例を抜き書きしたらキリがないので、ブラック企業にお勤め、もしくは仕事のストレスで病んでる方には心からおすすめしたい本です。
いつかちゃんと抜き書きしておきたい…誰かやってないだろうか。