2017-08-01から1ヶ月間の記事一覧

『猛スピードで母は/サイドカーに犬』長嶋 有

芥川賞受賞作。巧い。これは確かに誰か別の人の話だという距離と、読み進むと形造られる確かな共感とが独特で巧い。なのに、踏み込んでこないかんじが心地よい。この初期作品2編はどちらも受け身の状況に置かれた主人公であるんだけど、もどかしさは不思議に…

ハーメルンのバイオリン弾き 徒然

アラサーの人間が子ども時代に慣れ親しんだ漫画が復刊や続編などでリバイバルした数年前、ごたごたしながらひっそり消えて行った漫画がございます… アニメ化にゲーム化、長く月刊少年ガンガンの看板作品だった『ハーメルンのバイオリン弾き』著:渡辺道明。…

『幼い子の文学』瀬田 貞二

講演をまとめた物。ものすごく充実してて、言葉遊び、わらべうた、詩、物語、と幼い子の言葉の楽しみを体系的にまとめているので、すごい熱気の講演だったんだろうなあと思います。 何がいいって、やっぱりダメなもんはここがダメっていうこともしゃべるのが…

『「戦艦大和」の最期、それから 吉田満の戦後史 』千早 耿一郎

『「戦艦大和」の最期』が一次資料なんで、受容史も読みたいなと適当にタイトルで選びました。ごく近い人間によるインサイダーからの伝記にして、同じく帰還兵として当事者である著者の色も濃い。 復員した銀行員による社内の文芸同人誌の話とか、企業文化の…

トルーマン大統領は原爆投下をどのような論理で正当化したか サンドラ・サッチャー教授に聞く

記録でも、被害者の言葉でもなく、違う切り口での原爆についての話。ロジカルで無慈悲にも感じるけど、でも、そのロジカルさの上での正しさを追及する。判断するための情報や条件は適切か、良心のマヒはなかったか… 倫理に独立した価値基準があって、認識の…

広島テレビの碑

この季節に合わせて自社制作ドキュメンタリーを無料公開してる。 1969年版の碑が、めちゃくちゃすごい。2015年版見たことないんで見ようかな。 http://www.htv.jp/hiroshima/index2.html

『戦艦大和ノ最期』吉田満

講談社学芸文庫版。おそらく、その変遷と、受容をちょっとテキストから離れて見ることがいい年こいた立場には必要なんだろなって思うほど、一次資料。純粋に、テキストとしてものすごいテキスト。 個人の極限状態と、大きな状況の転回が重なって、この短い紙…

『流れる星は生きている』藤原てい

実は夫が結構な有名人で、お前かよ!!とお前呼ばわりしてしまうほど、子供3人を連れて引き揚げの極限状態の逃避行をする作者に感情移入していました。この、一番苦しいときに頼れなかった夫とは、その後離婚はしなかったとしても一生ダメだったろうなあと思…

『妊娠小説』斎藤 美奈子

妊娠が出てくる日本の文芸作品をだいたい「地位も名誉も(妻も)ある男が、年下の立場の弱い女を孕ませちゃって、とっても困って悩むんだけど、後でこんなことあったなあと安全に回想する」と喝破して抱腹絶倒。『舞姫』と『新生』のことなんだけど。その後…

『おもかげ復元師』笹原留似子

お涙ちょうだい枠で、ストレス解消に絶対泣けそうな本を読んでしまうタチの悪い悪癖が私にはあるのですが、ものすごい泣く。エンバーミング、死化粧をする納棺師のエッセイ。半分は東日本大震災の話で、悲しくないはずがない…。事実は小説よりも奇なりという…

『蜜のあわれ』室生犀星

最近青空文庫に入ったそうで話題だったので。 オシャレ。金魚さんとおじさまのオシャレなエロ会話。女に化けたり金魚生態らしさも誇示するある擬人化萌えする金魚。金魚とか異種間の生物的特性に萌えるのって、つまりは女の生物ぶりへの萌え。金魚が超エロく…

『イマジネーションの戦争 「戦争×文学 コレクション」』

「おれはミサイル」が読みたくて借りた、集英社の戦争アンソロジー20巻のうち1冊。『ゼロ年代SF傑作選』のほうにも入っててどっちでもよかったんだけど、こっちで。芥川龍之介から伊藤計画まで、空想の戦争。 世相ナイズした御伽話の芥川龍之介、戦争を知る…

『四人の交差点』トンミ キンヌネン 古市 真由美訳

フィンランドのベストセラー現代小説。共同体とは相いれない個人的な奇妙さを、否定肯定ないまぜで描いて、どうしても譲れない、捨てられない部分に伴う裏面は孤独という哀切を、淡々と描く。自我を扱う普遍的なドラマなんだけど、登場人物がいくら密接に暮…

いつも忘れる作家の名前

思い出そうとしていつも必ず出てこないので、ここに書いておきます。伊東忠太 建築家で動物彫刻を置きまくった。田中一村 「極貧 島 画家」とかでいつも検索しないと名前が思い出せない。 とても好きで、私の原点。子供の時に再評価ブームあって新聞のオマケ…