『四人の交差点』トンミ キンヌネン 古市 真由美訳

フィンランドのベストセラー現代小説。共同体とは相いれない個人的な奇妙さを、否定肯定ないまぜで描いて、どうしても譲れない、捨てられない部分に伴う裏面は孤独という哀切を、淡々と描く。自我を扱う普遍的なドラマなんだけど、登場人物がいくら密接に暮らしていても、広さと寒さと時代の長さで、互いに距離があるように感じるのは、お国柄なのか、まさに孤独を描いてるからなのか。

一つの家を舞台に、四人の登場人物の視点によって描かれる100年。南米文学だと永遠にも思える100年が、たった3世代でしかなく、こんなに短い。年も境遇も離れてすれ違う個人の重なりがタイトルどおりの『四つ辻』で、家という不動の安心のイメージが、焼け落ち、追い出され、増築で変化し、住人が出て行き… 何もかも去っていく。成長して死に、家から去る人々。でも、一瞬に宿る幸せ、と連続する生活の描写がよかった。

フィンランドといえば…「ぼくのエリ」「レア・エクスポーツ〜囚われのサンタクロース」のコメディなんだか真剣だかアートなんだか境界の曖昧な妙な味わいの映画と、日本の犬漫画の流れ星銀が好きすぎて現地の本屋の定番で、STGとスピードメタルとかシンフォニックメタルの名産地で、とか日本に紹介されてきた物で知る限り精神性がある種のオタク日本人に近いもの感じて、つまりは孤独なんだなあと思います。孤独へのあきらめと肯定。