『「戦艦大和」の最期、それから 吉田満の戦後史 』千早 耿一郎

『「戦艦大和」の最期』が一次資料なんで、受容史も読みたいなと適当にタイトルで選びました。

ごく近い人間によるインサイダーからの伝記にして、同じく帰還兵として当事者である著者の色も濃い。
復員した銀行員による社内の文芸同人誌の話とか、企業文化の雰囲気も知れて興味深い。戦争と生活が連続した時間の中で起きるってわかる。
当時のエリートである文系学生の徴兵により、経済や法務など有能な文系人材がある世代では激減したというのも、戦争モノなんかよく勉強する時期の子供視点では思ってもみなかったことでした。

文庫のほうの後書きにも紆余曲折の出版経緯が触れられていたけれど、版違いによる文の移動と絡めたこれ以上ないくらい詳しい成立史読めました。資料分析と当事者ならではの記載とで、こうした題材を扱うときに切り離しのできないものを感じます。