『幼い子の文学』瀬田 貞二

講演をまとめた物。ものすごく充実してて、言葉遊び、わらべうた、詩、物語、と幼い子の言葉の楽しみを体系的にまとめているので、すごい熱気の講演だったんだろうなあと思います。
何がいいって、やっぱりダメなもんはここがダメっていうこともしゃべるのがいい。詩のセンチメンタリズムについて、理性も感性も捨てて収束したのがそれかよ、みたいな批判とか、児童文学についてモヤモヤするところを明解な指摘ですごくよかった。

私にとって瀬田先生といえば、馳夫の人。馳夫と粥村の人。指輪物語の珍語発明者としての側面しか知らなくて時々絵本の翻訳者で見かけると指輪の人だー、というくらいだったのですが、これ読むと伝承や詩を含めたイギリス文学への広い知識と考察で、いかに日本語の読み物としてその空気うつそうとしていたか、単なる翻訳ではない翻案とでもいうべき作者の介入だったんだなあと思いました。
この本にも結構指輪について言及があるので、力を注いだ本当に大きな仕事だったんだろうと思います。ホビットの冒険の訳に賛否あっても、新訳がお子様舐めきった語チョイスでひどいんで瀬田訳一択なんだよなあ…。