『猛スピードで母は/サイドカーに犬』長嶋 有

芥川賞受賞作。巧い。これは確かに誰か別の人の話だという距離と、読み進むと形造られる確かな共感とが独特で巧い。なのに、踏み込んでこないかんじが心地よい。この初期作品2編はどちらも受け身の状況に置かれた主人公であるんだけど、もどかしさは不思議にない。あくまでも彼らの視点から描かれる状況が、読者としてはとても狭いものだとわからされて、状況がそうさせていることが、読者には納得しすぎるくらいに納得できて、第三者として見守ってしまう。小さな、狭い、近い世界。他人の夢や過去の、視野の狭い世界の確かさ。

私にとっては、別名義のブルボン小林ファミ通のコラムがファーストインパクトで、ゲームとびみょーーーうな個人的な関係を余すことなく、かといって茶化しすぎも、まじめすぎもしない、でもかけがえのない人生の一瞬として切り取る手腕にほれぼれしていたのですが、小説は面倒くさいで読んでませんでした。ゲームのこと書いてないし。巧かったなあ。時々読みたいです。