『戦艦大和ノ最期』吉田満

講談社学芸文庫版。おそらく、その変遷と、受容をちょっとテキストから離れて見ることがいい年こいた立場には必要なんだろなって思うほど、一次資料。

純粋に、テキストとしてものすごいテキスト。
個人の極限状態と、大きな状況の転回が重なって、この短い紙数で世界と人間のすべてが大転変を遂げるので、ものすごい劇的。ドキュメンタリーでもあり、小説でもあり、思想書のようでもあり、位置づけが受容の問題とかになってくるんだと思うけど、そんなのはさておき、読むだけの分にはものすごい。出てくる人間はほぼ死ぬんだけど、逃れられない死への激烈な苦悩、生きている人間には耐えられないような状況の時間が、全ての破滅に収束していく…何がすごいって、劇的なんですよ。ロマンとかヒロイックとか個人の極限状況におけるドラマのすべて。
カタカナの文語体が、抽象の極みで、経過する時間や、登場人物のセリフさえも精神や個性の圧縮になって、原液直飲みみたいな強烈さ。唯一無二のテキストでしょう。

あとヤバすぎんのが、職業の中でマジで死ぬ過程の記録ってことです。飲み会とかあっても会社は死なないけど、特攻控えて壮行会とかやってることは同じ。シャバでは八百屋なりき、だろうが学徒つまり大学生の上流エリートの坊ちゃんの有能人間だろうが仕事を全うすると死ぬ。避けられない死から、仕事に価値を見出す逆転の中でしか生きられない、この苦しさと緊迫と全て。

戦艦大和のデータがよくまとまってるページあったんで。
http://mainichi.jp/feature/afterwar70/pacificwar/data5.html?inb=ys