許されざるもの

なんかすごいものを見てしまった。
小学生くらいのときにレンタルビデオ屋に新作ポスターあったの覚えてます。それぐらい昔に大ヒットした映画だから、かんたんなあらすじから推測するに、更生した元ワルの主人公が、昔の仲間に悩まされて最後は対決!みたいなスカっとした筋だと思ってたら、なんかもう…
もう…


善だけでもない、悪だけでもない混沌。善と悪はそれぞれが確かに存在はするけれど、個人が担うものではない。映画だけど、キャラクターはいないから西部劇の終焉なんだ。
と、そのあたりのレベルで止まるのかなと思ったら、それ以上に「人を殺す」という行為そのものを描いた映画でした。善と悪どちらも人を殺す引き金になるけれど、行為そのものに善悪かけ離れた独立した性格がある。人殺しができる人間とできない人間がいる。だが、そこが邪悪の分かれ目ではない。
そこなんだっていう思いもしなかった点の価値観を問題にしてくるんで、なんだかもう、ものすごい映画だった。カルト。

保安官がガンマンたちの決闘の真相をふざけて話す、西部劇解体のメタっぽい表現がありながらの、銃を扱うやりとりから、ふいに銃が向けられて死が目前になる牢屋のシーンの生々しい重苦しさが粘つく時間…。
なのにお気楽なシーンがあったり、なんかもうすごいよこれ。

保安官が家を建てている、という一シーンにしてもいろいろなことを象徴し過ぎてて、それは引退が近くて時代の終焉が迫っていることでもあるだろうし、保守であったり、専門でないのに独断と自力で欠陥のある家(=社会)を建てていることの愚かさと、逆にフロンティアスピリットの自負であったり、なんだかもう。
始まりと終わりに、すでに死んだ妻の話が出てくるんだけれど、奇跡のような善があったという過去の話であり、不在によって善が表現されていて、ディティールも動機も全く描かれないけれどたしかにあった善。

これでタイトルが「許されざる」なんだけど…なんだかもう…余りにも異質で、グッタリ消耗してました。ものすごい映画を見た…