ファイ 悪魔に育てられた少年 

韓国映画ノワール。「オールドボーイ」観たとき、独特の暗さと、人間の人間への執着に衝撃を受けてました。韓国映画で描かれる暴力はとても辛い。世界の外側にあるものじゃないんだな暴力が。人間の営みとして、悲惨にも喜びにも過剰に意味づけられた暴力は、絆や愛のための暴力で、ある種正しい暴力とも言えなくもない。本当に個人的でしかない理由で、個人の関係性のためだけに振るわれる暴力。

この映画は、幼いころに誘拐され、犯罪者5人のパパに育てられた少年の話。映画のレベルはものすごい。大人も子供も異常に演技が巧くて、アクションも高価なだけじゃなくて作品を構築するシーンとして凄まじくいいアクションだし、息の抜きどころというかヒューマンも日常も温かいとこもいいし、OPからスタッフロール後までの全てで、完成度って点で質がとても高い。

その最高の描写で描かれる、人間の暴力の根源というドラマ。手段としての暴力が限りなく人間の本質だなあと。私はわりとクズ味を人間の味の一つとして許容するところあるんですが、その先。スタッフロールがまた心をえぐる映像で…この…ウェットな理不尽さ、暴力、不条理な幸福、全てが人間だなと。韓国映画観た後グッタリ疲れるんだよなあ…
昔「風の丘を越えてhttp://www.mafnet.jp/roman/korea_forum/korea07.htm
っていう映画を学校の授業で見て「恨」の価値観とか習ったけど、中国の凄美とか、日本のもののあわれとか、種類は違えど人間の存在を弄ぶ娯楽だよなあと思います。