ハーモニー

ネタバレなしだけど、初見で見るのが楽しいと思う人は見てからどうぞ。










小説ウロ覚えで見に行きました。伊藤計劃の長編中ではこれが一番好き。
百合も大好きだが、監督がそれ以上に好きなので、「たまに絵がなかむらたかしっぽい顔に見えるな…」という変な感想を抱きながら見てました。

最近、伊藤計劃の映画時評集読んだせいで、その映画への美意識借りるような見方もちょっとしてしまいました。ハリウッド演出の劣化コピーを見る気恥ずかしさや、観客より知性の低い脚本への怒りとか。そういうのはあんまりなくて、今の時代の劇場映画になっていたと思います。

色の演出はとても印象的で、映画館で見られてよかったなあと思うものでした。
赤と青。人工的にコントロールされた生命を象徴する赤とピンクの毒々しい都市と、兵器までピンクの差し色が入るキッチュのギャップから、古代のタイルの青、冷涼とした自然の青に移り変わっていく。今、もっと画面に派手に光源エフェクトかけたアニメ多いんで地味に感じるところもありましたが、前に出過ぎない演出でよかったのかもしれない。
都市は見たことのない風景で、演出にも雄弁でこれは視覚が小説よりも勝ったところだと思います。すごい。
人物の動きは超堅実。個人的に今流行りのどこもかしこもよく動く動かし方よりも、材質感と緩急、慣性のある動きが好きなんで、動きは見ててとてもよかったです。

1点オタクの因果で残念なのが、見慣れたreduceデザインの女キャラがどうしても他作品と要素が同じなもんでキャラかぶって見えて、入り込めなかったこと。自分のせいなんだけど、ぴっちりした肩出しボディスーツにアームカバー、それにいのりちゃん@ギルクラみたいなひし形モチーフのドレスがどうしても既視感あって。この先生が描く女子小学生から女子大生まで同じ顔に見えてしまう感受性の低さなので、百合要素強い作品なのに女キャラのデザインがよくないように感じてしまうストレスがありました。なんとなくキャラデザに違和感があって、ううううんんん。もともとの小説へのイメージが、現代+αみたいな世界だと思ってたので、今流行りのオタクデザインのreduce絵に私が抱く感覚が合わなかったんだなあと思います。特に最終盤。

監督には大期待と同時に、素晴らしい作品の監督であるが故の不安もありました。私の外側にある論理や物語を圧倒的に描いてくれるっていう信頼があったんですね。パルムの樹ファンタジックチルドレンも、私の物語ではないからこそ、自分でもびっくりするほど心が揺れて、大きな感動をしました。私に無いものを見る驚異。でも、ハーモニーは私の好きな話なので、それをこの監督が表現してくれるんだろうかっていう。小説に書かれた生死の感覚が、監督の生理に受け付けられずに、表現する根拠に至るまでにはいかないんじゃないかなっていう。
その心配は杞憂でした。が、たぶん好きな仕事ではなかったんじゃないかと思ってしまいます。

あと、キャラデザ同じなんだけど漫画版の三巷文がやわらかい絵ですごくいい。エロ漫画時代から超絶巧かった作家なので、当然人間と表情がものすごい巧い。アニメ版の表情演出が硬かったんで、余計にこの柔らかさが作品の感覚だなあと思ってしまいます。
もっと卑俗な感想をいえば、あからさまな百合エロい動きのお芝居はとてもよかったです!百合好きは見に行こう!エッチでどきどきするぞう!