『浮浪児 1945』

全体量はそんなに多くないんだけど一行も漏らさず、ものすごい情報量の本でした。なのに超読み易いし、最近読んだドキュメントの中では一番の良書。
上野駅周辺の浮浪児の、空襲による孤児発生の詳細から、ヤクザやパンパンといったとりまく人々、時期によるグループの入れ替わり、闇市とのかかわり、孤児院…それから孤児が戦後どうなったかまで、何が起きたのかしっかりわかります。戦争中の食糧不足も字面ではそりゃ常識なんだけど、食糧輸入に頼っていたデータの提示に、戦後すぐの大凶作と、戦後の復員による人口増加と、その時何が起きてたかを説明してくれる資料が一行くらいでサラッと触れられるだけでものすごい情報量。
3月の東京大空襲の翌日はとても寒い日で、父は出征か戦死していてもお母さんと家に昨日まではいたのに、がれきの街を彷徨う一人ぼっちの幼児はその日を越えることさえ難しかったこと。大きな名前の事実としては知っていても、考え及ばなかったことを提示してくれて、本当にすごい本でした。