2015-01-01から1年間の記事一覧

恒川光太郎を全部

ふと読み返したデビュー作の『夜市』が好みだったんで、全部読みました。読みやすいんでついつい読んじゃいましたが、今も現役で書き続けてる作家さんの作品全部読むって初体験。文学っぽい肌触りは、大人の都合に従わざるを得ない子供って図式書いたときに…

『ジャスト・ベイビー 赤ちゃんが教えてくれる善悪の起源』

赤ちゃんを対象にした実験で、道徳や共感を観察したエピソード集。印象的なエピソードは「1歳2か月の子は、泣いている子をその子の母親ではなく、自分の母親のところへ連れて行く」。共感はある、でもそれを解決する相手の身になるのはまだ先、とか細かく段…

『伊藤計劃映画時評集』1、2

このカッコイイ装丁の中身は、10年くらい前のネットでよく読んだようなサイト主の若い自意識過剰な文章の映画評で、端的に言えば作者が読み返すとのたうち回るような黒歴史。生きていたら新作が忙しいし、公開処刑もいいとこではずか死ぬから絶対に出版って…

『絵ハガキにされた少年』

アフリカ特派員の、記事からこぼれたドキュメンタリ集。ルワンダ虐殺、差別、紛争地の黒いダイヤや、ゲバラの訪阿とか。結論はなくてぐるぐるする文章なので新聞記事にはならない。有名なハゲタカと少女の写真を撮った写真家が、そのあと非難によって自殺し…

『資本論』

数年前学生街に住んでた時、道に落ちてたのを拾って読みました。罠かも。麦のなんとかっていう聞いたことない出版社の文庫本でアングラだわ。読んだ後、普通の古本屋に「そういうのはダメ〜」と買い取り拒否されちゃった本です。ショック。 でも、読んで面白…

備忘  

子供に今一番似てるものが、どらえもんのツチノコ。ふくれたほっぺた、頭髪の具合、つぶらな目、太い胴とかなり一致。(06月13日) 格ゲーマーのツイッター覗いて日常から逃避してるんだけども「ヒヤカムズアニューチャレンジャー」ってコメントと共におめでた…

『人は愛するに足り、真心は信ずるに足る――アフガンとの約束』 中村哲 澤地久枝

人生に疲れて聖人の本が読みたいターンで手に取りました。タイトルが直球で即効。アフガニスタンで、医療活動→水路建設に半生をかけた人がいたって知らなかった。予想できるとおり、個人としての人生が想像できるような意味での幸せじゃないし、聞き書きなの…

『黄金の少年、エメラルドの少女』『千年の祈り』『さすらう者たち』イーユン・リー著 篠森ゆりこ訳

黄金の少年〜がよかったので、いくつか読んでみました。どれもものすごくよかったんだけど、一番好きだったのはエキゾチック感満載なデビュー作の千年の祈り。技巧詰めまくりの結晶。英語で中国を描くっていう距離感が工芸作品みたいな印象でも、描かれてる…

『みなさん、さようなら』

団地から出ずに一生を過ごすと決めた主人公。というあらすじ一行の時点でもう読んでみたいし面白い。本当によくできてるエンタメ小説で、賞狙いで書かれて大賞とったデビュー作だから、山の位置とか、どんでん返しとか、複線の強弱とか見事にエンタメの定石…

『スクリプトドクターの脚本教室・初級篇』

創作者未満の人にやさしい。ものすごく。作品がマズイことの問題が、書くのは人なんだから、人の問題だってんでそこを解決して、作品ができあがるようにするっていう姿勢が、やさしすぎて胸が痛くなりました。実際ものすごくいい本だと思うし、この体験を買…

『ジーニアス・ファクトリー−「ノーベル賞受賞者精子バンク」の奇妙な物語』デイヴィッド・プロッツ著 酒井泰介訳

あんまりにも面白いから概要を人にしゃべったら、「でも、たくさんのお父さんが不幸になったんだ…」という男の感想でした。心に残ったのはそこか! ノーベル賞受賞者みたいな優秀な人間の精子を、優秀な女性に提供して人類の滅亡をふせごう!みたいなSF的妄…

『女たち三百人裏切りの書』古川 日出男

面白い。読み始めのところはまんま宇治十帖だってことに気がついて思い出そうとしても、薫の父誰だっけとスッカリ忘れてたんでウィキペディア見ちゃった・・・宇治十帖がすでにすごく面白いからさ、滑らかな現代語訳で読めるもんで、もう面白いにきまってるよ。…

『夜市』恒川 光太郎

何回か読んでるんだけど、置いてあるとつい手にとって読んじゃう。オチを忘れてました。表題作もいいんだけど、同時収録の「風の古道」が、よりいい。ハズレの少ない作家さんらしいので、他のも読みたいです。三文小説とかジャンルいえばそれまでだけど、読…

『ネグレクト』『ルポ虐待』杉山春

何が、こどもに悪いのか。こどもも大人も、人間なので、何が人間をだめにするのか、という本質のところが丁寧な取材で書かれていると思います。ルポって、質の悪いのもたくさん読んだけど、これは著者の立ち位置、文章の質、本としての構成もよくて、読み込…

『アイスクリームの歴史物語』 ローラ・ワイス 訳:竹田 円

シリーズの他のも読んだけど、これはアイスクリームにまつわる雑学に留まらない読み物としてすごくいいし、翻訳もすごくいい。アイスクリーム大好きすぎる本なので、むしょうにアイスクリームが食べたくなってこれ読み終わるまでの間にアイス4本くらい食べて…

『愛に時間を』ハインライン

図書館で借りたら初版が来ました・・・デカイ、厚い。これとらのあなとかで買ったエロ同人なら許すけど、この重い装丁をえっちらおっちら持って帰ってきた私が読んだものは…幼女から育てたカントリー娘が成長していっしょに開拓に行く話とか、古きよきSFってか…

『壊れるもの』福澤徹三

そう、これ別にホラーじゃなくていいよな… ホラー部分じゃなくて、崩壊していく日常パートのほうが恐ろしい。40歳の会社員が家を買って、よくある程度の家族の不和、よくある会社の風景、よくある日常が、なんの悪いこともしていないのに、考えうる限り悪い…

『モレル谷の奇蹟』 ディーノ ブッツァーティ 著 中山 エツコ訳

作者が以前見た、聖女の祠にあった奉納画を思い出しながら描いたという絵に短い文章が添えられてる、という大真面目な体裁をクスクスする本。ヤマアラシ(かわいい)の悪魔が聖職者を誘惑してたり、聖女っぽいものがUFO軍団と戦ってたりする絵を、短くも堅苦…

『ある一日』いしいしんじ

無理! 麦ふみクーツェとか、よくできてるとは思いつつあんまり好きじゃなかったんだけど、出産が題材というので、アマゾンレビューもいいし、まあ、読んでみたんだけどムーリー 圧倒的に肉体と実存のイベントな出産が、京都フワフワ妄想で彩られてて、まあ…

マッドマックス 怒りのデスロード

相反する側面が、奇跡の悪魔合体。とにかくメチャクチャにバカ映画として楽しみたい面。 http://miyearnzzlabo.com/archives/25762だが、そうものすごくまじめな映画でもあるのだ。 http://d.hatena.ne.jp/saebou/20150625/p1表現は、ものすごい。 CGじゃな…

アメリカン・スナイパー

時間ができたので、去年見たかった映画を、amazonのインスタントビデオを初めて使って見ました。便利過ぎてこれしか使わなくなりそう。でも、あまりにも便利なんで、映画はせめてしっかりテレビの前で見たほうがいいかもなあ。というか映画館が一番だよね。…

画鬼暁斎 展覧会

画鬼暁斎 展覧会 http://mimt.jp/kyosai/ 20年近く前の芸術新潮の河鍋暁斎特集を、高校生の頃図書館の払い下げでもらってからずっと捨てられずに持ってるんで、原画が見られるってんだから行ってきました。後もう一冊は、伊藤若冲。そうです私は超絶技巧で、…

10年前の大学の児童文学の創作会のこと

某大学の教育学部で、児童文学の授業とって、そのあとの先生囲んでの創作批評&アフター会も2年くらいいたんだけど、先生がホテルに行こうって誘いまくるからカワイイ子は速攻逃げるし、ブスに会長とか会計とか編集とか振ってくるし。闇。 かわいい女の子っ…

偶然

私は自分の妄想の世界の中で生きているんじゃないかと思うくらい、人間関係が狭い。 今日もまた、現在賃貸で居住している駅に、マイホーム買ったのでご近所になった、旦那さんと同じ出身地の同僚(この時点で接点多くて、説明がしにくい)の兄と父が、おそら…

エヌ氏のこと

エヌ氏は、今勤めている会社で出会った人で、たまに会うと楽しくて、何年も友人だったように思ったし、お互いそのように振舞った人だった。同じ仕事をしたことはなかったが、コミュニティの属性が近いというか、上位互換だったのでふる話には、全て過不足な…

続 よだれかけ

前の記事から半年、1才間近となりましたが、相変わらずよだれダラーリダラーリ。 いろいろなよだれかけ、またの名をスタイ、またの名をビブなど遣いまして、結論から言うとほとんど必要でした。無駄になったのは激安スタイくらい。最強の一角として、カータ…

『祈りの海』 イーガン

探偵とクライアントが、契約を確認するのにIpadみたいなの物で通信しあう場面とか、読者はサラっと理解できるけどこれ1998年のSF。タイムスリップ気分です。この中の「貸金庫」が久しぶりに読みたくなって借りました。家にあるけど見つからない・・・。 あらす…

『犬たちの明治維新 ポチの誕生』

犬が好きなんだねえ。好きなものについて書かれた本はよいものです。しかも好きな人が多いものについてだと、本そのものが堂々としててよいです。犬が好きじゃないとやってられないこの労力。膨大な資料を犬が好きで読みまくったからこその俯瞰。それにして…

『定本 何かが空を飛んでいる』

教養。UFOについてそれが現れる文化背景の前半と、後半は19世紀オカルトの概要とか。著者が大学教授の別ペンネームなんで、学問とエンタメと個人の病的妄想がグラデーションのようにつながってることを、膨大な文献駆使して描いてくれて読み物として普通に面…

『謎の独立国家ソマリランド』

アフリカの内戦真っ只中に、なんか平和で民主主義で戦争無い国があるという話が、マジで、行ってみたら想像を遥かに超えた実体で民主主義やってるしもうSF。ソマリランド人も、日本人的感性からは異星人並に遠い。ほんともうSF。民主主義をやるのに、三権分…