『壊れるもの』福澤徹三

そう、これ別にホラーじゃなくていいよな… ホラー部分じゃなくて、崩壊していく日常パートのほうが恐ろしい。40歳の会社員が家を買って、よくある程度の家族の不和、よくある会社の風景、よくある日常が、なんの悪いこともしていないのに、考えうる限り悪い方向に転落してく。ホラーな落ちで原因があることが救いに思えてくる。現実は何の理由も無く崩壊していくものなのでしょう。人生完走って大変だわ。

 寝付かれないままに、とりとめなく過去を遡る。どこかに原因を求めたところでどうなるものでもないが、意思に反して記憶のページは次々に繰られていく。
 会社を辞めたとき、この家を買ったとき、麻美が受験に通ったとき、麻美が生まれたとき、陽子と結婚したとき、そして大成百貨店に内定したとき。
 あの晴れやかな日が、きょうに続いているのが信じられない。