『伊藤計劃映画時評集』1、2

このカッコイイ装丁の中身は、10年くらい前のネットでよく読んだようなサイト主の若い自意識過剰な文章の映画評で、端的に言えば作者が読み返すとのたうち回るような黒歴史。生きていたら新作が忙しいし、公開処刑もいいとこではずか死ぬから絶対に出版っていう形にはされなかったでしょう。生きてたらなあ。寂しい。
昭和生まれは、だいたい全部見たことある映画で、当時の空気と相まってうんうんと懐かしかったです。もう更新されることの無い書籍という媒体で眺めても、Webの空気の若さにムズムズする。タイトルにカッコイイ英単語を配するのもよく見たぞい。
好きな映画の何が面白いかを全く知らない人間っていう仮想読者に、親切に過剰におせっかいに自己承認欲求も満たしつつ言葉にして、自分の好きな映画に興味を持たない世間という仮想敵に知らしめてやるこの若さ。WWWが超つまんないけど全編スチームパンクメカはいいんだよなあとか、アイアンジャイアントは確かに完璧だったとか、好事家のマストバイになったリベリオンといい、好きなもののの感性はほぼ同じなので、私の承認欲求も満たされたのでした。この時代の映画で、ファイトクラブLAコンフィデンシャルは特別扱いにしていいんだ…。さよなら2000年代。この時代のあと、私はもっと面白いと思う映画がどんどん出てきて楽しかったので切ない。