『黄金の眼に映るもの』 カースン・マッカラーズ

アメリカの小説。ノヴェラくらいの分量ゆえに濃厚。
軍の基地で殺人事件が起きた、という導入から始まるので、この中の誰かが殺されるという予感を抱きながら読み進む構造だけどミステリではない。
普段読むかんじとはちょっと違ってたんで感想のとっかかりが見つからなかったところに、解説が助けになりました。内省しない人物造形は確かに私も好きなザ・アメリカ小説っていうかんじで、面白かったんだけど、内省が無い主人公に寄り添うタイプの小説ではなく、無自覚に振る舞う登場人物たちを作者が見下ろす。相互に影響を与え合っているんだけれど、登場人物たちは孤独。不幸でもある。見るからに豊かなアメリカ的な日々なのに、虚ろな、破滅の予感がそれぞれの人間の描写で表現されます。出来事にはあまりフォーカスしない感覚が独特でちょっと驚く。好きな小説ではなかったけど、おもしろかったです。

余談として、「九柱戯」「ぶどう酒」なんかの単語に、結構古い訳だなあと気が付かされました。古い小説なんだこれ。