『私は二歳』松田道雄

一人称2歳児の皮をかぶった小児科医であることを隠そうともしない、昭和の軽小説で面白いですよおおおお。
いしいしんじの一人称幼児とか、違和感ばっかり感じてましたが、この「一人称二歳児の皮をかぶった小児科医」という皮膜があることで、こうも面白くなるものなのか。昭和の家族の京都しゃべくりの緩急で面白い上に、育児の心意気もばっちりとか良書過ぎ。すごい短いのに、多層な情報量でこれは唯一無二のスタイルなのかも。
『育児の百科』がプリミティブで力強い一人称医者という文体で、めっちゃ面白かったけど、文章がほんと巧いよこの人。もう適齢期じゃないけど『私は赤ちゃん』も読もうと思います。

>20151104追記
小児科医の連載なんで、坊やがものすごく医者に連れて行かれまくるんだけども、時代背景を考えると本当に連日医者通いしてたのかもな、とも思いました。S30 乳児68/1000、新生児38/1000が死んでる時代で、子供を亡くしたお母さんも普通に会話で出てくる。
日本のポリオ流行まっさかりのちょうどそのときの連載です。予防接種調べてるとき、ポリオ根絶のドキュメント本を一冊丸ごとWebに載せてるページあったんで読んだらドラマチックで面白かったです。