『喋る馬』バーナード・マラマッド 柴田元幸訳

柴田先生チョイスの短編集。一番有名な「魔法の樽」は外したんだと。ちぇっ

WW2間もないニューヨークのユダヤ人に、良心の呵責という形をとって訪れる現実が、神話や寓話に転換する。抒情と信仰を仲立ちとして成立する。瞬間ではなくて、そこからきっと永遠に変わる。周囲は何も変わらないけれど、人間が変わる。短編故の疾走する時間の完璧な描写、その後に広がる豊かさが寓話性とあいまっての大きなものなんだけど、苦い悔恨やどうしようもなさでこれ抒情っていっていいのかわかんないんだけど寂しい。
ユダヤ人作家によるユダヤ人ネタ(流浪の境遇、ドイツで親戚死にまくり、それゆえの貧しさとお金金金)がたくさん読めるので、今までスルーしてたこういうのがユダヤ人ネタだったのか、という発見もありました。