『完本 カリスマ―中内功とダイエーの「戦後」』佐野 眞一

子供の時にはあった、スーパー ダイエーがどうやってできたかと、その終わり。すでにある巨大な常識みたいなシステムが、ほんの短時間で出来上がって、それがどれだけの変節を経たのか、興味深かったです。時間。
文化人類学社会学の範疇では、と作中インタビューされた経済学者が言ってたみたいに、成功も失敗も経済の理屈ではない。もちろん経済活動だったり、時代のタイミングもあるのだけれど、それ以上に人間の来歴や、親族関係とか人間の営みそのものが反映されて人生としか言いようがない。
ダイエー一代記が、人生と、そのまま戦後の日本の記録になってて、読み応えたっぷりの本でした。20年以上かけて1冊作ったっていう側面もあって、すごく読んで満足。リアルタイムの文章と、著者自身にも20年が流れて、インタビュー先の相手がアレ読みましたよ言うとか、時間の感覚があって面白い。
おそらく週刊誌なんかに発表された記事が元だろうっていう扇情と読み易さのトピック立ての分量が飽きない。

なんかもうすごいもん。外食産業の社長なんか、腹に胃切除をはじめとした無数の手術痕抱えてて、それは一日十食を課して来たから… 物理と合理を超えて意志を実行っていう時代の空気があったんだ。無理。
まさに企業戦士なんだけど、当然結構な数の人間が早死にしてて、仕事で無理して死んだ物故歴でもありました。役員も死んでるけど、名もなき店員たちの開店準備で徹夜続きで吐血、倒れるetc.… 体が丈夫な人間が、爺さんになってえらくなる。
これはもう生まれたときの肉体という運であって、人間の努力とか勉強でなんとかなるみたいな土俵じゃなくて、運命とかカオスの領域で最早神話。人間が大きいことするには戦場が必要という人類の意志を感じてしまうぜ…(厨二