『いしぶみ』

みなさんがいつか大きくなったとき、そしてみなさんがお父さんお母さんになったとき、もう一度、この本を読み返してください。

10年ほど広島にいました。この本を読むのは初めてですが、住んでたのでそういう雰囲気には子ども時代に接していたんだけど、その後に自分の生活が広がっていくにつれて、ちょっとしたエピソードに実感がわくようになりました。たとえば、『仲みどりを探す旅』を読んで、翌日には電車が市内に入ってる、ということは壊滅した市中で仕事をしていた職業人がいたこと・・・
この本は『いしぶみ−広島二中一年生全滅の記録』というタイトルで、遺族が語る末期の様子を構成したテレビ番組の草稿から起こされた本です。広島テレビ側のテレビならではの無名の距離感と解説がいっそう哀切。当時の中学なので県の全域からエリートの子が来るようなとこなんですね。その学年が全員死ぬ。

正午すぎても、広島市は全市が黒煙をあげてはげしく燃えていました。市の外に逃げていく子どもたちと反対に、子どもたちを気づかうお母さんやお父さんが、猛火の市内にはいってきました。(p.60)

この文章を、今はとても悲しく思います。