『ブラッド・メリディアン』コーマック・マッカーシー 黒原敏行 訳

荒野+無法者+流血に次ぐ流血の残酷絵巻で、まるでマッドマックスな世紀末、ただし19世紀のアメリカとメキシコ。こういう争いと破滅の世界観ってサブカルアメリカかと思ってたけど、アメリカの原風景なんですかね。
とある少年が、19世紀のアメリカを放浪するうちに、インディアンを討伐して賞金を稼ぐ軍団に加わるんですがー・・・
あまりにも流血が多くて人死にカウンターが画面端に欲しいくらいの虐殺が一回のクライマックスでなく常態なんで、一歩踏み間違うとこれはエンタメに堕するんだけど、なんかニューヨークタイムズのベストオブアメリカンノヴェルズらしいですよ。たぶん訳もうまくて、文体は超濃密。普通の通俗の形容詞はまずないし、登場人物の内省や心理描写は一切なしだけど、読点全く無い情景描写で彼我が混乱するし、文章自体の質量が高い。小説として読むことが超面白かったけど、好きだから読んでよとは言えないし、内容についての感想も他人に言うと取り繕っちゃいそうで言えない。けど面白かったなあ。