有島武朗『生まれいずる悩み、カインの末裔、かんかん虫、溺れかけた兄妹、小さき者、骨、お末の死』

「骨」よかった。このどうしようもなさ。悲しみの対処の仕方が、ダメ人間養成テキストでよかった。でも、一房の葡萄の人だから、いい話の児童文学っぽいのもあるんだ。

「もうこの苦しみはおれ一人でたくさんなんだ」@生まれいづる悩み
我彼の境界が曖昧になる感覚を、良い時の高揚、悪い時の鈍麻と執着とかどちらのパターンでも描いてて、その一体感が魅力的でした。この一体感が時に作者の視点で勝手に解釈っていう傲慢とも感じるけど、人間の仕組みだ。もう。個性っていう立脚点が、欧米小説と全然違う感覚ある。群声っていうか。

カインの末裔のむちゃくちゃさとパワー、戦後すぐの在日朝鮮人主人公の『血と骨』思い出すなあ。今の日本人はこういうパワー系にはならないだろなあ。
異文化。こういうのも文化。一皮むけば私もこうだろっていう同一感はなく、自分と連綿とつながるって感覚はもう薄い。

なんか自分の文学への憧れって、なんだかんだいって有閑階級の高尚な考えだと思ってる節あって、下層民の自分の問題に高次の解決を求めて、そこに救済があるように思っちゃったりするんだけど、このウシジマくんみたいな泥試合を金持ちが書くんだから、救われないよなと理不尽なこと思うのでした。ええいこのブルジョアどもめ。

あと、セックス描写が、ちょっと前のエロマンガってかエロ劇画系統に通ずるパワーあふれるかんじで、今この不況時代に流行ってるらぶらぶバブーの体力のない甘やかしとは違うんで、こういうのパワーあふれるのが連綿とエロいって思われてたんだなあって。それだけじゃないのはもちろん読めばわかるけど、言わずにはおられなんだ。エロい描写ってなんかパワーあるから好きよ。