『ふたりの証拠』『第三の嘘』アゴタ・クリストフ 堀 茂樹訳

悪童日記』の続編。

『ふたりの証拠』
悪童日記の少年の一人称ではなく普通の小説みたいな三人称になり、登場人物はもう大人で、舞台は戦争中でない、ということは、人物も背景も激動しないし、圧倒的につまらない道具立てってことで、あの悪童日記の続編なのに…と読んでたらかったるくなってくるんだけど、子供キャラの行く末が気になるので読んじゃう。
登場人物たちが陰湿な絡み合いで、正にも負にも深く引きずり込む、入り込むのがヨーロッパの小説っぽいなあと。なんかすごいザックリしたくくりしたけど『ソラル』とか読んだときの、恋愛体質男のクズ感がいいんだよなあと思います。日本人だと愛に狂うのは女キャラの役割だなあとか思うんですが、一人前の人間じゃない、社会的に抹殺されているからこそ、愛に狂うことが許されるキャラというか。

『第三の嘘』
これ単体だとあまり価値がない。普通の小説過ぎて。先行作品に対してのトリックに意味がある。同じ素材のバリエーションっていうのかな、作家論みたいな視点込みだと、すごく興味深い作品だと思います。生き急いでる人は、悪童日記だけ読むでいいと思う。