『心臓を貫かれて』マイケル・ギルモア 村上春樹訳

『冷血』みたいな犯罪実録モノ。でも、冷血の著者と犯人が魂の兄弟だったのに対して、死刑になった兄について著者が書いてる本。同じ事件について、ライターが書いた「死刑執行人の歌」は冷血の後釜に大ブレイクしたそうで。訳者、曰くそっちはつまんないそうで。

「みんなが好きな、家族と流血の話」
で要約できてしまうように、一つの家族について深く延延と書かれていて、絶望しますが、ものすごく面白い本でもあります。
人が死ぬ話、不幸な話っていうのは、ミステリでも実話でも、ただ事件としてあるだけで面白いもんです。何で人を魅了するのか、しかも娯楽に似た根幹的な快楽で魅了してくるのか、問いかけているような。静かに、著者自身も考え込んでいて、ハマりこんでる。
誰かが、死ぬっていうことについて何が起こったのか、愛と憎しみとか救いとか、あるとかないとか、一つだけの結論は出てこないけど、本一冊が含む可能性っていうか、これも謎めいた大きな本でした。