『エレクトラ 中上健次の生涯』高山文彦

血が吹くような危機一髪がぱんぱんに詰まった、その家族、土地からの逃亡と故郷の郷愁とか、なんかそういうの好きっぽいのでよく読んでしまうのですが、そのへんの最高峰中上健次の評伝。

ほとんど、作品とイコールの人のようで、その評伝を読むだけでも、血と地と血と地と・・・・濃密。そして流血。カタルシスでスッキリしました。
テキスト論とかあるけどさ、こういうの読むとそれだけじゃ語れないよなぁと、今更ながら思います。小説を書くのは、人なので、その人が小説が書ける人と環境で、その人に小説向きの中身が詰まってるって稀有なことみたいです。血をインクに、最後の一滴までしぼって死ぬので、書くことで幸せになるはずがない。因果なことに、血は生きてる限り出てくるもんで、紙の上にいくら固定しても、尽きることなく血は流れ続ける。ほどよく瀉血なら健康的でいられるかもしれないけど、血が少しじゃ小説にならないし、もっと血の濃い小説を、小説で食うならもっともっと量書かなきゃで、だんだんと弱って破滅にいたる行為でした。