『明るい炭鉱』吉岡 宏高

オッサンの自伝に毛が生えたような文章なので書籍自体が面白いかといえば微妙だけど、書かれた事柄は大層面白。炭鉱の産業的な側面と、たった数十年でなくなった巨大産業の外観がコンパクトに読めるので、当時者が書いた(ほぼ)一次資料だと思って耐えれば読みきれます。異世界過ぎてまるでSF。しかもスゲー古いやつ。そうそう、こういうポジティブな労働の本が読みたかったんだよっていう、社畜として生きることをボンヤリと信じる身の上には面白い本でした。ジャンル:社畜
でも、この手の労働系の本ってかタコ部屋の本とか女工系とかでも、脱走したり宵越しの金を浪費する痛快な話とか、そこまで行かなくてもフっと挿入される負の色彩のないエピソードなんか、主張や思想の色がついてないそのときそこにいた誰かの主観が妙に面白くて印象に残ったりします。
↓の一文はまるでハインラインのSFですごくよかった。

立坑は、工事に莫大な資金を要することから、どの炭鉱でも導入できるというものではなかった。鉱区内の埋蔵炭量や将来的な生産計画を見極めて、一本の立坑で少なくとも五○年は堀り続けるという決意と確信をもって投資が決定された。