『自分ひとりの部屋』ヴァージニア・ウルフ

紹介読んで面白そうだったんで。
女性についての本。女性作家が創作することについて、その歴史と作者の思いを人に語るために書かれた原稿に手を入れた本なので、小説でもなくエッセイでも批評でもない。読者は作者を直接見つめるし、作者にも読者が必要。本の中に、小説に書かれたような作者がいたり、、それを作者が説明してくれるし、作者の系譜にまだ見ぬ読者も位置づけられてる感覚も起こさせるし、なかなかないタイプの読書体験でした。
気が付かなかったことへ向き合う姿勢が、批難するでもなく怒りでもなく、共感のような比喩や描写は本当に繊細で美麗で読むことが楽しい。楽しむことの後ろめたさはなく、この本が発信するためのものであるから必然でもあるという安全さを感じる。啓蒙書みたいな、暴力的だったり危険な感覚は無かったです。
創作は個人的な問題を解消するツールでなく、それ以上の段階があってそっちのほうがいい作品だよ、ってこんなに断言してくれるのはすごいことでした。

小説と、創作する女性の作者の関係について、まっすぐたっぷり投げかけられて読者が受け止める本なので、読者のアウトプットは気軽な感想ではなく小説でしょう。それだけ質量があって、読んでしまったらもう戻れない本。
私忘れっぽいんで、忘れたときは別ですが。

親切!というくらい注がたくさんあるのが浅学にはありがたかったです。
この本に詩人のキャヴェンディッシュ夫人が出てくるけど、これちょっと前に読んだ『バナナの世界史』に出てくる今の時代の人が食べてるフルーツバナナ・キャベンディッシュ種の語源の、熱帯の原種バナナ収集した貴族のキャベンディッシュさん。1826キャベンディッシュバナナ到着 1623 マーガレット・キャベンディッシュさんなのでご先祖なんじゃないでしょうか。なんか面白い偶然でした。