『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』増田 俊也

格闘技には疎いんで何も知らない状態で読みだしましたが、抜群に文章が巧い上に、狂的な思い込みを感じる圧倒的な意志をベースに書かれるので、読み応えありました。木村政彦力道山の試合、これが何を意味するのか、日本の格闘技(武道、スポーツetc…)の歴史と、昭和の裏面史。
凄まじい結末になる。すべてが白日の下にさらけ出されたと思ったら、闇に消えていく。でもごまかしじゃなくて、人間が一対一で戦って勝負をするという、純粋な暴力への根源の渇望が言語外のものだからか、ものすごく正直で誠実なドキュメントゆえの結末だと思います。
著者のパワーあふれるイカれてる本は好きで読むんだけど、そういうのは往々にして文章もイカれてしまうのですけど、これは違う。話題に全く興味が無くても、これだけ著者が執念を持っていることを、抜群の文章で書かれてるんで夢中になって読めました。