『動くものはすべて殺せ――アメリカ兵はベトナムで何をしたか』

戦争やばいよやばすぎんよ。読書人生の中でも、1,2を争うキツかった本。2001年に大学院生が別のこと調べてるときに偶然見つけた記録から、とんでもないことがわかったよっていう2013年アメリカ出版の本。


ショアー』とか読むとナチスホロコーストヤバすぎるって戦慄するじゃん、これ読むとなんとアメリカ軍も同じ目で見ずにはいられないようになる。なんと。私は米軍わりと嫌いじゃないってか、『キャットシットワン』(のらくろくんみたいな動物擬人化の戦争漫画)が娯楽として大好きなんで、ベトナム戦争の米軍にはロマンはあるけどっていうダブスタになりました。これやばすぎんのが、精神論とか哲学の本じゃなくて、感情排したデータのドキュメンタリーなんだよね…

東洋人は人間扱いしない価値観の人たちが、味方は退去しなさいゾーンを勝手に設定して、その中にいる人は合法的に殺せることにして、昇進システムに「敵兵の死体の数(ボディカウント)」が必要な将校が、兵士に「動くものはすべて殺せ作戦」を命令すると、武器もってなくても、老人でも女でも幼児でも赤ちゃんでも、どんな人間でも殺されるっていうことになる。
村人504人(生き残りは3人)を米軍が丸ごと虐殺したソンミ村事件が報道されて、一気に反戦に傾いていくのが歴史なんですが、これが戦争の狂気の到達点じゃなくて、日常。告発を政治的に利用しただけで、他の山のような類似事件は、告発者は処罰されるし、隠ぺいどころか問題にさえならなかった日常。
銃向けて逃げたら「逃げた罪」で合法的に銃殺。その場にいればもちろん銃殺。民間人を怖がらせて面白がるっていう卑劣この上ない犯罪に思うけど、前述の人種蔑視と死体数=成績になるシステムに加えて、兵士自身も極限状態の恐怖とストレスでそういう行動に走らざるをえないっていうのもあり、組織的に民間人殺戮が行われていたという本です。民間人殺戮が目的のシステムが広いベトナムの全土にわたり、ベトナム戦争の期間20年くらい続いたので、そりゃ戦争法とか守られてないよ。アメリカやばすぎんな。
韓国軍のベトナム犯罪にも触れられてますが、そもそも米軍属だし、大元の米軍の方針に沿ってるだけで、やってることはごく米軍標準なんだよねっていう…

アメリカって人種問題をやかましく言ってるけど、それはまだ解決してないからなんですね…やばすぎんのが、気晴らしでダンプでベトナム人をひき殺しても、何の問題にもならないし当然本人に罪の意識もない。ダンプトラックで子どもを追いかけてひき殺した数を競うゲーム「グーク・ホッケー」流行るし、当然無罪とか、まじでやばいよ。

現実の戦争は、どんなに民間人を守るルールやシステムが策定されようと、それは合法的に殺すための線に転換されて、何の理由もなくいつでも誰でも殺されるっていうことなんで、やばすぎんよ。起きることは、どの国でもどの時代でも同じなんだろうなあ。
戦争やばすぎるという本でした。