『対馬丸』大城 立裕,嘉陽 安男,船越 義彰 絵:長 新太

除籍資料だったのでもらってきて読みました。史実と異なるとこもあるそうだけど、詳細なドキュメンタリー。児童書で小学校高学年くらい向けかな、でも大人が背景知った上で読んでも、結構な情報量の本でした。

戦争はピンポイントの事件じゃなくて、連続する社会状況なんで、人生経験30年くらいだと似たようなことをやってきているから、時代は違えどif世界みたいな息苦しさ。学校からプリントももらうじゃん、遠足もあるじゃん、台風来で停電水道ストップで家族全員で避難とかもしたじゃんって、共感でつらい。こういう戦争もの児童文学読んだのって20年くらい前なんで、今って戦争当時からさらに+20年経っているけれど自分が経験積んでる分、近しく感じるようになっていました。
沖縄からの疎開児童を満載した船が、潜水艦に撃沈されて、児童900名あまりのうち生き残りは59人という対馬丸事件。船に乗るまでに、8歳〜の子を手放すことへの家族の反対もあれば、戦況悪化の沖縄に残ることも不安で、どちらかを選ぶ残酷な選択を迫る引率教師にも家族がいるし、ついでに左翼児童文学では敵に描かれがちな兵隊だって友達だったり同僚だったりするもんだから、日々の生活と地続きなのが本当に辛い。誰かが起こしている状況のはずなのに、自分にはコントロールがなくてどうしようもない。船に乗る子どももそうだし、船に乗せることを選んだ親もそうだし、教師や校長、その上の役人も。親が子どものために疎開の食糧や衣服をかいがいしく準備して、うきうき新品の服を着る子どもの記述が悲しい。