『ピダハン』ダニエル・L・エヴェレット

「この人たちと天国に行くのだ」という、超志の高い伝道者が言語調査も含めてアマゾンの部族と生活を共にするうちに、その文化を理解して自分を顧みて無神論者になるまで。未開部族の言語で聖書を作って布教する団体で派遣されてきて、聖書翻訳するんだけど、その概念を表現する言語が無いってことを納得していく。
ものすごい本。レアで密度ある人生送った人間が本を書く必要に駆られて書いた本なんで超貴重!面白い!白人が文明批判のユートピアを原住民に見るみたいな紋切型とも違って、異質の言語体系を持つ文化をあるがままに土地とともに見る。崇拝じゃなくて、邪悪としか思えないようなことも受け入れる。
病気にかかった瀕死の妻子二人を乗せて船で出発するときに、「マッチ買ってきて」とか普段のおつかい頼まれて怒り狂うけど、そもそもあいさつにあたる言葉が存在し無い。生死がかかってるっても、ここの人たちにとっては医療無いからなすすべなく死ぬ病気になったら死ぬしかない。
確実に幸福はある。私とは違った形で、私とは違う生。
この方言語学者で、人間には本能として言語があるっていうのを、文化によって規定されたピダハン語っていう反証の声あげた人でもあるんですね。そこ問題なのか!と思ってたけど、ある種西洋的な神の息吹にも似た、人類共通の言語の能力という理論を、認知能力と人間の生物としての特性によってできた方法だっていうことで否定したんですよ。