『子育てを歌う』 松村由利子

こどものとも」に連載された、子育てをうたった短歌評伝。鉄板。文学好きで子供できた人いたらプレゼントに最適な一冊。イイゾー

背負し子は眠れば重し蝉時雨

これは、有名な歌ではなく夫の祖父の俳句です。秀歌かどうかはさておき、子供がいればわかるだろーう?わかってほのぼの滋味あるだろーう。
普段全く興味が無い短歌の人を、このめくるめく普遍の凡人ワールドの一員として楽しむことができるの一冊なのです。話題がたまひよ読者欄と同じ。

まるまる一冊子供を歌って、作者みんなが読者と何一つ変わらない親という属性で歌い、限りなく没個性になって不思議。詩とか短歌って、作者ありきで読むもんだったから。

白い紙こまかに刻みゐるこどもはうしろに立つ者をしらず

さりげなく有名歌人も混ぜてくるけど、ああ〜わかる〜みたいな歌の作者が葛原妙子(二つ名が幻視の女王なんでキレキレ)だったり後から見て驚く。加えて、評でこの歌人独特の感性も解説してくれる。

押入れにひそむこの子よ父のわるきところのみ伝はりけらし

斎藤茂吉がこの歌なんで、息子どっちだろとかウケる。評者が歌人なんで、短歌好きな人にもOKの濃さ。
短歌という短さ故に、子育てあるあるを普遍の一片として表現するのに最適で、すごく読者の裾野が広い一冊と思います。