ブルージャスミン

セレブな奥様が、貧乏なシングルマザーの妹の家へ一文無しで転がり込む。夫が詐欺まがいのビジネスで逮捕され、裁判で全部取られて借金背負って精神を病んでしまった…という表面から、ぼろぼろと崩れていく。過去の虚栄も、未来も、今の生活も、奥様自身も…
虚栄、という言葉に尽きると思うんですが、主役のケイトブランシェットの神経質な病んでる演技が目病み女に風邪引き男を体現したお色気で、おもろうてやがて悲しな映画でした。

うそをつく人間が叶えられる幸せは、この悲しい幸せの形しかないんだなあ…でも、今の自分ではなくなるために必要な自己否定とセットの未来への展望ってか、嘘じゃなくて希望という側面もある。嘘と希望が紙一重で、実際ある程度まで正しく機能して、現実を獲得する力にもなる。脱出願望が無い妹は、現状維持のダメな男にズルズル依存するわかりやすいクズ。後半の嘘がふくらんでいくと同時に、手に入れたい希望も破裂しそうな風船みたいに薄くもろくも大きくなってく危うさが、痛痛しい。そして流れる音楽がお気楽で、ああ無情。

アマゾンプライムで見たんで、レビュー欄とか見ちゃうんだけども、「金持ちでも幸せとは限らない、引き換えに貧乏な妹がピザ一枚で恋人と戯れられる幸せ」っていやいやいやいやそこそんなシーンじゃなくてクズ男から逃げられない妹のクズっぷりの皮肉だろって。見る人によって感想変わるもんでした。

余談ですが、この神経質極まる女見てて、過去に何人もこういう人に会ってたなあと思いだしてましたと。虚がバレたときの逆ギレで、一瞬にして崩壊するかんじがデジャブでリアルな演技だ…。すーぐわかる嘘がバレるたびに、昔は相手を怒ってかかってたけど、虚が無いと生きられない人間もいるのだ…いるいる。こういう人いる。

セレブの没落ってことで、『After Perfect: A Daughter's Memoir (English
Edition)』っていう本読みたいんだけど翻訳でないかなあ。