『烈しく攻めるものはこれを奪う』フラナリー・オコナー 佐伯彰一訳

新年元気があるうちにキツいやつ。装丁が蛍光色と虹色箔でキラキラしててとってもキッチュ。っていうかイカれてるというか。

短編は超密度で、ものすごく残酷に感じてグッタリしちゃうんでお試しにどうぞ。
「善人はなかなかいない」http://f59.aaacafe.ne.jp/~walkinon/goodman.html
完璧さ故に、読者はそれぞれ解釈が全然違う。滑稽だったり愚かなことを真顔で、誤解のしようもなく真剣だって言う残酷。血がドバドバ出て死体が積まれるような残酷じゃないんだけど。救いようがない。完璧ゆえに。

大伯父に赤ん坊のころさらわれて森で預言者として育てられた少年の話。もう設定だけで残酷で完璧過ぎて、読むのをためらう。森、そして町といった奇妙に時空を喪失して寓話のようにも思える中、ストーリーは否応なく寓話の中に生きる人と、町で現代に生きる登場人物と出会いに進んで苦しい。後戻りができない。ifもない。完璧さゆえに、それしかない残酷。完璧な破局

少年の話し言葉がなんか変だなと思ったんですが、これ変な訳なんじゃなくて大伯父の言葉と聖書の言葉しか語彙がないから、たぶん変なしゃべり方してる表現なんじゃないだろかと気が付いてから、ますます陰鬱。皮肉なポーズとかとれればまだ救われるんだけど、それは起きるべくして起きたそうでしかありえないもので、皮肉や苦笑も遠ざけてしまって、残酷。でも、不思議に芸術に携わる人の憑かれたかんじとか、べらぼうなパワーある類の人間にも通じるところも感じて密度のある人生、これも人生だよなあとも思うのです。