『おおきなとりにさらわれないように』川上弘美

SF。文芸書枠ですけどSFです。ゆるふわポスアカ。
滅亡を語る柔らかな口語の連作短編。やっぱ新井素子を連想しちゃうけど、熱は無い。ディティールを詰めない寓話の手触りもあって、壮大な概念を投げかけるジュブナイルっぽくもある。AIにRNAウイルス転写に腸内フローラに、今っぽい素材が背後に伺えるけど、それは表には出てこず、登場人物の柔らかな語りだけ。今文芸の旬っていう作家さんだと思ってたんですが、デビューがSFなんですね。

巧いし私はポストアポカリプス大好きなんで面白いです。けど、けどって保留したい気持ちもある。世界滅亡とポスアカ物を読みまくってSFスレしてるから、あんまり衝撃がないけど、文芸枠とかジュブナイル枠で初めてこういうの読んだらショックだろうなあ。
ジュブナイルのように丁寧かと言えば、書き手が時間とかなさそうな(特に最後)メタが透けて見える荒さなんで、やっぱ時事的な文芸書枠な気もする。
SFジャンル嗜好で消費していいもんなら、系譜としてビッグブラザー(男)や、男女1対の創造神、といった既存の概念を踏まえた道具立てでそういうところも楽しい。「大きな母」のディティール萌え〜。