『チグリスとユーフラテス』新井素子

私は新井素子作品が読みたいので読みました
私は新井素子作品が読みたいので読みました
私は新井素子作品が読みたいので読みました
私は新井素子作品が読みたいので読みました
ワタシハアライモトコサクヒンガヨミタクテヨミマシタ
ウグーッもうたえられねえ一人称にたえられねえええええ
となったら、上記の初心を虚心になるまで繰り返しましょう。
面白かったです。
とある植民星の終末を描いたSF。

最初の章さえ耐えきれば… 慣れという人間の偉大な能力によって面白くよみすすめることができるでしょう…
新井素子SFを読むという動機を全うしました。おっそろしいのが、他にも読んだことある新井素子作品と雰囲気全然変わらなくて職人芸の域。新井素子先生の本読んでるんだから、それはそうなんだけど、新井素子作品を読むっていう行為を人生においてやるかやらないかだ。
この前読んだ『おおきなとりにさらわれないように』で新井素子先生を連想した私は、微妙に間違ってて30年前の東京練馬在住女子による一人称なんだよ新井素子先生は。…驚異の読み易さがすごいんだけど、70〜80年代少女小説っていう文体はもう作家性としか。
昔の軽小説についてオールドオタクの「昔はあれしか読む物なかったんだよ!」という吐き捨てるような感想を思い出すのでした。

面白い小説なんですよ!少なくとも驚異の読み易さ。一般文芸ではありません。SF枠です。英訳されてもう一回日本語訳されたら、文芸書枠に行けるかもしれない。
1999年の第20回日本SF大賞なんだけども、未来がない社会に子供を産むことについての予知。SFは先触れ。日本ヤバイのが、人口減少してるっていっても、その中身が出生率低下+老人長寿なんで、老人がすごく長生きしてるのに人口が減ってるってことなんで、もうどうにもならないんだろうなあ


感想文おしまい。
以下は雑枠です。
なんでこの一人称を耐えられないと思うんだろうか…
SFのナイーブな男の自分勝手な一人称は読めるのに、自分勝手で幼稚とも思えるような素直さ=女性らしさと自尊心高めの文系女子っぽい一人称がなぜキツいんだろうか…
そりゃ世界の終末だからこそ輝く人格だからっていうのが答えになってる気もしますが、作中人物にこいつはバカだと言わせてるけど、けど…

作中キャラの感情の動きが人間らしさっていうよりも、なんだか統合失調症の人みたいに思えてきて病的な手のほどこしようがなさを感じてしまう… 都合の悪いものを病気枠にいれたい私の認知傾向とも思いつつ、庄野頼子と同じ枠でこれ否定しちゃいけないんだな的な。都合の悪いもの=ジョーカー的な位置づけなんだけども、庄野先生は病人芸を自覚してるからいいんだけど、なんかこっちは話が一切通じない感じがある。何か変な感想だな。人類の半分である女性らしさといえば女性らしさで、しかも個性であって否定するところでもないんですがなんか。

大昔、70年代~80年代少女マンガや少女小説の、ブリっ子で女らしさを保ちつつ、本性はべらんめえで男スキルに理屈っぽさとこざかしさのまるで川原泉作品の女性のような…ああなんかもう…
そういう女性像は結局挫折したんだろうなあ。
男のいいとこどりしながら女扱いポジションを保持って、たぶんあんまりにもズルいんだよたぶん。降りかかる事件は少女相手に手加減された茶番で、男よりも素晴らしい成果をあげる。この前、第一作は少女小説として発表された十二国記読んで女性のあまりの抑圧に今の時代からは驚いたんで、奪われていることが可視化されてきた世代だと思うから、こうした、能力をプラスしてくようなステータスが女性像として娯楽になれたんだと思うんだけど、でも、こういう女性像だとダメだったんだろうなあと思います。
私が、女扱い+をあまり生涯でもらったことがないんで厳しいのかもしれないとも思う。
でも、どうしようもないシリアスで深刻で重大としか思えない問題を解決するには、こうしたパラダイム変換でしかなしえないんだろうとも思います。


感想追記
でも『チグリスとユーフラテス』を、一般人女性に勧めたら絶対ダメだぞ!リアル35才の女と約束だ!
この感性が普遍的に通じるよいことだとは思ってはいけない。女性は1200%くらいこの本が嫌いだと思う。(個人の感想です)
昭和っぽいジェンダーなんですよこれ。フェミとかそういうものとは正反対で、最先端でも新しい考えでもなんでもない。気が付きましたが、女性を肯定してくれるのは男性、女性を否定するのは女性という役回りに。自覚できていないっぽい。
出てくる女キャラってみんな女友達一人もいなさそうな女キャラ(作者の分身でしかなくて書き分けできていない)の自己論争ってか自己否定のキャラでしかなくて、他の個性をもった女性と関係性が持てそうにない不自然な女なんですよ…。シスターフッドが結べない。
あと、男キャラひどいですよねこれ・・・昔の男像でさえなくて、すごく古い少女漫画の王子様タイプしかいないけど、女が書いた小説だからって悪い意味で許されてる気がする。

伝統的な日本SF的いいところと、一般人が思うSFのダメなところがバーター。
SF者も女性が多いんでジェンダーSF、もうSF大会とかで散々批判されてそうなんだけどこれが批判されてないんならどこまでも男の趣味世界。この世界観を肯定しなくちゃSF界で生きていけなかった作者世代はともかく、読む方はおかしいぞって感覚を持ち込んでもいい時代だと思いますよ。ってか、これ悪い意味でのSF枠。正直。小説としてはレベルが低いです。SFとしては楽しいです。まあ日本SFはこういうもんって。これは18年前の小説で過去の遺物だから。