『とある魔術の電脳戦機(とあるまじゅつのバーチャロン)』鎌池和馬

本カテゴリにするか、ゲームカテゴリにするか結構迷うラノベ
ビデオゲームを描いた小説が硬軟問わず大好きで結構読んでるんですけど、その中でも経緯が特殊かつ、丁寧に作られた良作と思います。

・『とある魔術の〜:アニメ化した大ヒットラノベ 2004年〜連載中 44巻!1520万部!
・電脳戦機:1995年アーケード筐体で発売し、シリーズ続くも2009年のXBOX360版(マニアなゲーム機…)を最後に沈黙。熱狂的なファンが存在してましてタニタ社長が接待DC対戦配信してたり、Web魚拓の開発者も有名なプレイヤーとかとか。

・ゲームスタッフが携帯機(どうみてもPSVita)用に作った新作システムのゲームで遊ぶ、少年少女を描いた定番ラノベのスピンオフが2017年発売

一体読者は何才なんだ!!!
多くは作者と間違いなく同世代で、小説内ゲームで遊ぶ少年少女と同じお子さんがいてもおかしくないお年頃です…。
このラノベ自体がシリーズ長くて、最早作中人物と同じ10代学生が読んでるか疑わしいんですが、とにかく少年少女向け小説の体は保ちながら、おっさん感涙のいにしえのゲームの新作が作中で描かれているという、なんとも入り組んだことになっています。新作ゲームが出ないなら小説の中で出せばいいじゃない…

だってさ、昔さ、子供の時でさえ、そんな世間一般に大流行はしなかったと思うんですよバーチャロン。それが小説の世界で、巷間に大流行しているゲームとして描かれてて、少年少女が遊んでいる姿が描かれる…動機はルサンチマンなのか?!なんなのこのシャングリラ。メタ視点で見ると、欲望充足装置としての仕立てが非常に強くて、エンタメ小説として現代における進化の一種なんだろうなと思います。…もう自分の欲望を目の当たりにして恥ずかしい。


さておき、対戦ゲームをテーマにした小説って難しいんですよね。
ジャンルとしてRPGやシミュレーションは、ストーリー要約版みたいな目的があるんですが、対戦ゲームを題材にした読みきりとなると、勝負の駆け引きの楽しさそのものを描かないといけないし、ゲームそのもののビジュアルやシステムの面白さが肝になってたりするので、それをどう小説内に落とし込むか。またRPG同様にストーリーや設定ももちろんあると。
それらを考えうる要素を、最適解で設定してきたようなところあります。戦う動機、人間が戦う喜び、ゲームシステムで戦う必然性、ビジュアルも取り入れて、もうこれ加点オーバーしまくってて評価とかそういう線にない。小説としてもさすがの大ヒット小説で、キャラクターは魅力的だし、技巧が光って、うーん5千万点くらいあげたい。買え!


で、
実はこのコラボでゲームも携帯機で2018新作発売決定!!!ヤッター まじか!!!
新作!
なので、
お恥ずかしながら1年も前に出てた小説を今更買いました。ゲーム発売決定して体験版やったから読んだ、っていうタイミングもあるでしょうが、出版→ゲーム化の奇跡にもう10億万点くらいあげたい。

世の中こんなことするんだなという、なかなか他にはないかんじのゲーム小説でした。