『クローヴィス物語』サキ

軽妙な短編で、会話のテンポや緩急が名人芸で素敵なんですが、底意地が悪い…フランスかと思ったらイギリスで、少年の心を忘れない20代男性向けのエスプリとイギリス意地悪ジョークの到達点。読者層が狭かったわけじゃないので、当時の文学のターゲットが20代男性だったんだろうなあと。女も女の子も赤子も老人も、こてんぱんになるでよ。でも不思議に、男の子が満足そうにバタートーストを焼く無原罪感もいいものでした。貴族っぽいけど孤児の男の子が、養育者のおばさんがいやでいやでたまらない。秘密の物置小屋で飼育する動物、寧猛な動物神への空想のような信仰、とある事件でおばさんが死ぬ(ネタバレ)けど、軽妙ギャグ。暗くないの。
幼い男の子だからいいけど、いい年した男に無原罪感もとい無責任感あると、ちょっとやなかんじありました。