『紙つなげ! 彼らが本の紙を作っている 再生・日本製紙石巻工場』佐々涼子

石巻の海岸一帯にそびえる巨大な製紙工場。構内から40体もの遺体が出てきた壊滅的な被害の様子の描写から、こんなにがんばって工場動かさなくても…と思わないでもないモーレツの突貫作業に、何がかかっていたか…たたみかけるように記述される事情が工場再開の一点に集中していくので、読み進める手がついつい速くなる。地域産業の要であること、用紙を必要とする日本全国の出版社の要望、紙を作る巨大な機械と人生を共にしてきた技術者たち…
こんな被害があったんだという面もあるけど、何よりこんな意志が働いたのか、人間がこれをやったのか、という輝かしい記録でもある。そして、出版とは本とは何か、人間の営みとは、と未来まで駆けていくようないい本でした。そして絶対に紙で読まないといけない。伝わる体験が違う。