『道草』夏目漱石

夏目漱石太宰治は、「俺の怒りが有頂天」のツートップで長らく読んでなかったんですが、面白かったです。30過ぎて今初めて面白い。今!やっと!芥川と鴎外は理想主義者だから若いうちでも、わくわく読むんだけど、ほんと夏目漱石はイライラして学生時代は最後まで読めなかった。若者には若者にしかわからない熱狂と、若者には面白みがよくわかんないジャンルがあるのだ…年くって家族のストレスを実体験として持ってて、主人公とほぼ同じ年で結構似たような境遇になったから面白いんだろうなあ…

あるきっかけで、養育してくれた父母の卑しいエピソードを思い出すことから始まって、付き合う親戚のいやなかんじの貧乏具合、学問で身を立てる自分の経済的な弱さと、もう没落した名家からもらった嫁と価値観あわずにぎくしゃく、嫁の父からの借金申込み、こんな中で一番金持ちと目されて金を引っ張られ続ける主人公…でも、この主人公も絶妙にオタクっぽいっていうか世慣れない性格で成功者なわけではない。100年前なのに、困ってるポイントがほぼ同じで共感で苦しくてもう。外国文学で読まない話だから、これが日本文学なんだなあ…いかにも19〜20世紀の昔っぽい小説にも見えるんだけど、主人公が動かないってのが独特なのかな。変化も成長もしない。

そうそう、青空文庫の「えあ草紙」というリーダーのブラウザ版で読みました。青空文庫短編ばっかり読んでましたが、これなら長い作品も読みたくなる。