『カラシニコフ』1、2

カラシニコフ銃のすべて。
カラシニコフを持った少年兵へのインタビューから始まり、今実際に使われている現場(1は現在内戦してるアフリカ諸国、2で南米(とアメリカ)東欧、イランイラクアフガニスタン)への取材、存命中の銃の設計者カラシニコフ氏へのインタビュー、どんな使い方と戦略が想定されていたか、カラシニコフ銃が変えた世界が書かれてます。取材先が敵対者同士から末端からトップ、売り手に買い手に、そこに銃を密造する村まで多岐に渡るので、これ日本国籍じゃないと書けない。すごい本だ。
WW2のソ連ナチスドイツの自動小銃から紙一重で助かったカラシニコフ氏の無念からスタートして、厳しい気候でも動作する「簡単な機械は壊れない」という哲学を体現した銃が、冷戦構造の中、世界の紛争地に輸出されていく。量産も容易で安価(1丁150ドル!)で大量生産、大量のコピー品、そして分解するとたった8パーツにしかならないので熟練を必要としない簡単すぎる操作故に、大量の子ども兵士を生み出すことになる…の戦争の現代史を読むことになるので、既存の知識がどんどん結びついていくので優れたガイドでした。

アンダーグラウンド」というユーゴスラビア映画って、すごくファンタジックな映画で、戦争時に地下に逃れて情報が一切遮断された人々に、今も続く戦争の義勇兵のためとして銃を製造させる武器商人が出てきたけれど、これ直喩だったんですね。アメリカの銃も1994〜2004まではカラシニコフみたいな連射できる銃禁止だったのに、規制なくなって以降大量乱射事件が増えてるとか。あと、日本の武器輸出禁止も、運用当初は輸出用に装備を外した銃器が、現地で武器として実用されていたことあったりで完全禁止になったりとか、知ってるのに知らないことだらけ。
論調もあるかもだけど、安全な社会には銃が存在することは無い、と言い切ってもよさそう。